劇場予告観て気になっていたので観てみたらかなり面白かった!
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「セレブ」とか「泥棒」とかいったキーワードのせいで『オーシャンズ11』的なアクション映画と思われ敬遠されてしまったのか、はたまたセレブとかブランドとかでプロモーションして釣った客層に合わなかったのか、僕の観測圏では感想すらほとんど見かけなかったのだけれど、本質は『ソーシャル・ネットワーク』っぽい作品なので個人的にはかなり気に入ってしまった。
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終始アッパーな映像の中に、当代の若者の切なさが描かれている。
本作は実際に起きた10代の少年少女達によるセレブの邸宅を狙った連続窃盗事件が題材。
日本語公式サイトを見ると、知名度からかエマ・ワトソン演じるニッキーが主人公なように見えるが、実際には主人公は冴えない男子高校生のマーク。
彼は自身の容姿に過剰にコンプレックスを持っていた。
転校をしても友達もできず、周囲にはバカにされる。(と当人が思っているだけなんじゃないだろうか?)
悪しき「ボーイ・ミーツ・ガール」
そんな彼に声をかけてくれたのが、すこし頭のネジが飛んでる不良少女のレベッカ。
彼女には車上荒らしや自動車泥棒をする盗癖があった。
しかしマークにとって唯一と言って良い親友、止めるどころか自らも加担してしまう。
そして二人の犯罪はエスカレートし、新たな仲間も加わって、パリス・ヒルトンやアンジョリーナ・ジョリーなどのセレブの邸宅へ侵入しては窃盗事件を繰り返すようになる。
ニッキーのスピリチュアルな母が言うところの「引き寄せの法則」が悪しき形で実現してるのが面白い。
劇中でもマークはほとんど自身のための窃盗は行っておらず、ひたすら少女達の欲望を叶えるために加担している。
そして犯罪の最中も彼だけは比較的冷静でやばいやばいと思いつつも、しかし周囲に承認されたいがために犯罪を重ねてしまう。
実際にそうだったのか作品の意図として抜いているのかは分からないが、このマークとレベッカの関係性が安易な恋愛感情でない所が興味深い。
結局のところマークが欲しかったのはブランド物でも金でもなくて、「居場所」だったのだ。
軽薄な家庭
他方で少女達はというと、これがほんとにアバズレ揃い。(褒め言葉)
どこまでも欲望に正直で、キラキラ輝くセレブに憧れ、そのブランド物を身に付ければ自らも輝けるんだとばかりに犯罪を重ねていく。
平均的な日本人からするとハリウッドセレブと言われてもどうしても画面の向こう側の話なのだが、さながら王侯貴族のような優雅な生活を送る人々が身近に感じられる彼女たちにとっては、よりリアルな「憧れ」なのかもしれない。
彼女たちだってハッキリいえば相当な富裕層なのは間違いない。
親は社長や重役、車を乗り回し、連日パーティーに通い、、、
しかし、経済的に豊かなこととは裏腹な家庭環境の軽薄さは都度描写される。
頻繁な夜遊びに増えていくブランド品、まともに考えれば親が気づかないはずはないのだが、親からすれば子供も自分を演出するアクセサリーに過ぎないのか、全く気づかれない。
終盤のクロエの家庭の食卓やら後述するニッキーと母親のインタビューなんかが皮肉が効いていて見ものだ。
憎らしいまでの逞しさ
さて、そんな少年少女の浅はかで粗雑な犯罪が長続きするはずもなく、当然のように捕まることになるのだが、そこからの各人の描写が実に面白い。
マークが孤独に逆戻りなあたりはお決まりなのだが、エマ・ワトソン演じるニッキーが秀逸なのだ!
彼女は事件すら自らを有名にする好機として利用とする。
終盤のインタビューの世間受けを狙った白々しさは見ものだ。
ありがちな「彼女も時代の被害者だったんですよー」ではなく、大人の及びもつかないような逞しさでもって締めるあたりが本作の味わい深さだと思う。
(僕ら男にとっては、あーいう賢くて見た目の良い女というのが一番怖いのかもしれない。)
結局のところこの作品というのは、そういう目立ったもん勝ちのモラルのないセレブやそれに熱狂する界隈への批判なように思った。
映像美、スピード感
さて、本作のような泥棒を描いた作品は、普通は盗む相手を悪役にするだとか華麗な手口で魅せるだとかして場を持たせるものなのだが、本作ではそのようなことは一切ない。
彼らは特別な技術も用いずに、「普通に」稚拙な空き巣を繰り返すだけなのだ。
けれども90分全く退屈しないのは映像と音響のセンスの良さによるところがあるだろう。
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アッパーなラップをBGMに、「バブリー」などという日本的な表現では足りない程のバカバカしいまでの絢爛豪華な邸宅やギラギラなブランド品が画面を彩る。
そしてなんとこれらはセットではなく実際のパリス・ヒルトンの邸宅が使われているというから驚きだ。
それと、最初は「よれたTシャツにパーカー」みたいだったマークの格好が、だんだんスタイリッシュになっていくのも見どころ。
冒頭で述べたように、僕にはこの作品が内容も結末も全く異なるながらも『ソーシャル・ネットワーク』と重なるように見えた。
若者の社会からの疎外感と歪んだ上昇志向、承認欲求の暴発。
それらをスピーディーに描き切った作品である。
そんなわけで、セレブとかそういうのに興味は無くても、『ソーシャル・ネットワーク』を楽しめた人には本作は是非ともオススメしたい。
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追記↓こんなんみっけた