そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

ここが残念だよ『スノーピアサー』

まだ週末の雪が溶け残る中、大好物のディストピアものということで『スノーピアサー』見に行ってきた。

英語での撮影、ハリウッド役者の起用、迫力のアクションと3Dなど、なるほど世界の市場を視野に入れた作りになっていると感心する反面、お話として面白いかと言われると正直残念だなという感想をもった。


語るにはどうしても内容に触れざるをえないので、以下ネタバレ注意。






人類に残された疾走する「小さな世界」

本作は、寒冷化し死の惑星と化した地球が舞台。

人類は世界中を疾走する列車のみを残された生存圏とし、車両ごとの階級社会を築いていた。


強固な階級社会を描いたディストピア作品は数多くあれど、列車をその舞台としたのは非常に面白いなと思った。

後方の車両ほど階級が下がるとか、脱出の不可能な密室性とか、とにかくパッと見で小難しい説明なしにその閉塞感を感じることができる。

撮影側の都合で考えても、それほど大掛かりでないセットでロケも無しにその世界観を表現できる秀逸な舞台設定なように思う。


そして序盤でこの世界観ならではの処刑シーンを描くことにより、列車の外の世界で生きてはいけないことを強烈に印象付けることに成功している。


そんな列車という小さな「世界」の中で、主人公は最下層となる最後列の車両から最前列の機関部を目指すのがこの物語の筋となる。

さながらスラムのような最後尾から最前列を目指す過程で通過する、食品生産車両、植物栽培車両、水槽(!)車両など、列車という密室の中に様々な「世界」がグッと詰め込まれているのが映像的に面白かった。


余談だけど、似たような閉所が舞台の映画だと『CUBE』が凄く好き。

こちらも単純な舞台設定ながら、有無を言わさぬ勢いあるストーリーに引き込まれる。

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そういえばどちらも「この扉の先には何があるんだろう」な作品だった。

なぜ列車なの?

ただ、根本にして最大の疑問が作中で一切説明されないのは辛いなと感じた。

列車である以上はレールの上を走らなければいけないわけだが、雪が振り続ける世界で除雪なしに列車が走れる状態を維持できるわけはないし、そもそも列車を永久に走らせられるだけのエネルギー源があるなら地上に設備を作れば良いのではないかと思ってしまう。


もちろん、世界観の詳細な説明をあえて放棄することによって魅力が出る作品だってある。

(前段の『CUBE』でいうと、説明的な3作目は凄く萎えたし、、、)

けれど本作はそれに当たらないはずだ。

「閉所からの脱出アクション」とともに「世界の謎を暴く」ことに話の筋が乗っている以上、この部分について説明が疎かなのはいただけないように思う。


僕が見逃したわけでなければ作中では特に「列車でなければいけない」理由は語られていなかったし、また「処刑」とか「トンネル」とか場面場面の映像面では列車であることを活かせていたけれど、世界観としてはそれをあまり活かせていたようには思えない。

個人的には絶対に後方車両が切り離される展開があるものだと思ってたし、先頭車両と思ったら…みたいのとか、実は他にも列車がとか、「永久機関」に秘密があるとか、そういうちゃぶ台返しがあると期待していた。

結果的には一切そういうギミックは無く、SF的な方向で期待していた身としては残念に思ったのだった。

『ドリームキャッチャー』の「全部宇宙人でした」位ガッカリした。

やっぱり共感できない……

そしてもう一つ残念だったのが、登場人物に共感しきれなかったことだろう。


本作一番の山場であるはずのラスボス(ともう一人)による「仕組まれた反乱」が明かされるあたりはどうにも描写があっさりしすぎで今ひとつ盛り上がらない。

もう少し途中の展開でそれを匂わせるべきだったし、ラスボス描写が少ないせいかキャラとして中途半端な印象をもってしまった。


そして機関部を前にしての扉を開ける開けないあたりのやり取りはあまりにも唐突でそれをする理由がさっぱりわからず、主人公が躁うつ病にでもかかったんじゃないかって風に感じられたし、爆破で外に出るなら何も山奥でやらんでもと思う。

だいたいあのラスト、どう考えても生き残れんだろ…...

「硬直した社会の中で下克上を演じて見せても支配構造が切り替わるだけだ、レールを外れて新天地を目指そう」という寓話性は買うけれど、今ひとつその「新天地」で生きれる感じがしないのはテーマ的にどうなんだろう。

あとちょっと

あとは、やはりお国柄なのかちょいちょい日本sageな描写が鼻につく。

特に必然性もないのに敵の管理職は日本人設定だし、特にそういう設定でもないはずなのに敵の集団は「バンザーイ」とか言うし、あとお約束で世界地図から日本消されてるし。

作品が楽しめなくなる程ではないのだけれど、やっぱりちょっとね。

スノーピアサー [Blu-ray]

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そんなわけで個人的にはそこまで楽しめる作品ではなかったなという感想にはなるけれど、しかし一方で映像面では十分世界で戦えるレベルの物だという風にも感じた。

「近未来SF」を期待するとガッカリするけど、「アクション」で「エンターテイメント」な部分では確かな力を持った作品だった。


どうも邦画ではこの手のSFやアクションてちゃっちさが漂ってしまうわけで、この分野に関しては完全に日本は隣国よりレベルが低いように思う。

何がいけないんだろうね。