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そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『ノックス・マシン』感想。SF的にはちょっと・・・

個人的な注目作『バレットガールズ』の配達をとり逃して、ちょっとやる気がしない今日この頃。

それはそれとして、通勤時間で読み終わったんでKindle版『ノックス・マシン』の感想でも。


Amazonの紹介じゃ本格ミステリとSFの美しき「融合」がここにある。などと謳われている以上、SF好きとしては手を出さないわけにはゆくまいとKindle版を買ってみた。

が、それが失敗だったのかもしれない・・・

Kindle版=電子オリジナル・コンデンス版

本作は中編集。

ちゃんと確認しなかったのが悪いのだが、Kindle版は紙の書籍のうちの2篇のみを収録したものとなっている。


以下の感想では割と不満気味な事を述べるが、もしかしたら完全版ならもっと充実した感想になったのかもしれない。

とはいえ一回電子書籍で買った本を再度買いたい気はしないんだよな。

かといって図書館行って探すのもダルいし・・・(個人的には図書館行く面倒よりは本一冊程度なら金銭負担を選んでしまう派閥)

古典SF短編のような表題作「ノックス・マシン」

そんなわけで表題作。

コンピュータが自動で物語を作り出すことができるようになった時代、古典探偵小説を研究していたユアンは「ノックスの十戒」をテーマとした論文を発表したことにより、図らずも国家的なタイムマシンの研究競争に巻き込まれてゆく。

それほどミステリに造形の深くない僕でもなにかで見聞きした記憶がある、ミステリ小説の基本指針「ノックスの十戒」。

ノックスの十戒 - Wikipedia

この中の「中国人を登場させてはならない」に着想を得たタイムリープ小説。


話の筋自体は「タイムリープすることにより現状に収まる」というハッキリ言うとよく見るタイプの話の構造ではあるが、「no chainaman」の解釈のひねりの面白さと、ユアンのあれよあれよという間に巻き込まれてゆく感じの描写も心地よく、古典SF短編のような収まりの良さを感じることができた。

「面白かった」というよりは「美しさを感じた」という方が感覚的に近いかもしれない。

SF的な理屈付けにちょっと厳しいように見える部分もあったが、全体の流れのなかではそれほど気になりはしなかった。少なくともこの作品については。

「論理蒸発ーーノックス・マシン2」はちょっと納得感が足りない

1つ目の「ノックス・マシン」より後の時代、あらゆる物語が電子管理される時代を舞台に、"物語"が炎上し消失する事件が発生する。

タイトルに「ノックス・マシン2」と付くことからも分かるように、こちらも古典ミステリネタを散りばめながらSF的な話を展開しようとした物語なのだが、流石に「ノックス・マシン」ほどの収まりの良さも無く、むしろ理屈付けの厳しさが目についてしまった。

小難しいブラックホール用語を用いているが、その使われ方は『シュタインズゲート』程度の粗雑さだし、物語の構造を電子データの消失に結びつける部分には今ひとつ納得感が得られなかった。

(シュタゲって本編はキャラとノリと設定の絶妙なバランスによって”傑作”になっていたと思う。外伝作品が残念な感じに見えてしまうのは、そのバランスが崩れることによって粗が見えすぎるせいなんじゃなかろうか。)

SF好きという人種は(というと主語が大きすぎるかもしれないが)「物語における設定と展開の納得感」を重んじる傾向にあるわけで、そこからするとひどく厳しい感じの作品に見えてしまった。


SFとしては納得感が薄く、ミステリとしても全く推理の余地が無い。

読んだ本の冊数しか誇るもののないミステリマニアが「元ネタ知ってるぜ、フフン」て言いたいがためだけの作品に見えるが、かといってそれが十分に活かされているようにも見えない。


そんなわけで、全体通してみると個人的には満足度の薄い作品ということになってしまった。

僕はどうしてもSF寄りからの見方になるので、これがミステリ寄りからだったら、もっと違った見え方があったのかもしれない。

もしくはこれが完全版の書籍だったら、あるいは古典ミステリの元ネタを完全に網羅していたらもっと芳しい感想を抱けたのかもしれない。