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そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『her/世界でひとつの彼女』感想

上映当時(少なくともTL上では)評判が良かったので気にはなっていた本作。

OSとの恋愛を描いた近未来のSFラブストーリーという意欲的なテーマであり、理詰めの収まりの良さがキモなSFというジャンルと理屈を超越することに意味があるラブストーリーの食い合せはどうなのかなと思ったが、描き出される「問い」は実に興味深かった。

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以下ネタバレ含みます。












身体性と恋愛観

身体の拡張や異なる身体性を持つ知性への想像力といったところはSFの王道要素の一つであるが、本作でもそのあたりは抜かりがない。


OSであるサマンサは肉体を持たない。

まず端的に現れるのがセックスの問題。

このあたりの描写も面白くて、セオドアはテレフォンセックスでは女優のヌードを想像するのに対し、サマンサとの「セックス」では相手の身体を想像する描写がないのだ。

そしてサマンサの提案した代理セックスを拒否する。

相手との関係性を確認する手段としてのセックスにおいては、実のところサマンサよりもセオドアの方が身体性を重視しているのだ。


そして、身体性の問題が埋めがたい価値観の差異として広がっていく。

サマンサは物理的な制約がないため同時に何人とも会話することができ、そして、「恋愛」することができる。

(特にそこまで詳しく描写されてはいないが)いわゆるクラウド的な考え方を適用するなら、アルゴリズムの最適化なんかを共有しつつも「記憶」は分離できるだろうから、人間でいうところの「浮気」とは少々違うだろう。

だが、恋愛を「一対一の関係性」として捉える人間にとって、それはどこまでいっても容認しがたいことに思えるのだ。


このへん、「中古のラブプラスにハマれるか」的な話を思いだした。

僕自身はそもそもラブプラス自体に全くハマれなかった人間なので残念ながら実感としては捉えることができないのだが、結構面白い問題意識だと思うんだよね。

今って萌えコンテンツへのリテラシーがある程度高い方が、色々な創作物をより楽しめると思う。

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ちなみにこういう部分にまで想像力が及んでいないあたりが、『楽園追放』で残念だった点でもある。

『楽園追放』で残念だったところ、見てみたい次の「ディストピア」について - そんな今日この頃でして、、、

人類が情報体となったなら、間違いなく現在の人類とは精神性が異なってくるはずである。


作り物は「偽物」か?

さて、話は終盤に差し掛かると、(作中意図的に視線を逸らされてきた)作り物であるAIとのそれを恋愛と呼ぶことができるのか、という問いがつきつけられる。

機械仕掛けのアルゴリズムの「感情」は偽物か?


ここで対比となるセオドアの代筆した手紙。

そこに記される言葉は本人のものではない。

だが、依頼者について調べ相手を想い記された手紙を、そこから受け取る「感情」を偽物と呼べるだろうか。

フレーズを考えたのはセオドアだが、重要なのはあくまで依頼者と送り先という「オブジェクトの実在」だけなのだ。


そもそも僕らの言葉自体、誰かから受け継がれてきたものであり、思考をエンコードしたものにすぎない。

それは音や文字列として受け取られ、デコードされて受け取り主の思考へと「感情」として作用する。

そこにあるの「本物」と「偽物」の区別ではない。



とかく、「デジタルはダメだ、生身の触れ合いこそが大事」という安直なところに収めなかったあたりがこの物語の良いところだろう。

そういう安直さを避けることにより、SF的な設定から「愛とは何か?」という問いを実に上手く描き出している。

(が、その要素に言及しようと思ったが上手くまとまらなかった・・・)

この映画は「物語の中に綺麗に収めて答えを与えてくれる」というよりは、「物語の外に問いを投げかける」物語なのだ。


この映画はテーマ的に面白さ以外でも、BGMや画面の色彩感についても目を見張るものがある。

殆ど主人公に焦点があたりっぱなしながら、全く飽きのこない画作りになっているという点についても、非常に興味深い一本だと思う。

her/世界でひとつの彼女(吹替版)

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吹き替え版のサマンサがCV.林原めぐみなの地味に興味深い。

今回はインスタントビデオの字幕版でみたけど、吹き替え版もいつか観ておきたいなと思う。