そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

ガンダム THE ORIGIN 9巻 感想、主義・歴史・神格化

TVシリーズでは描かれなかった独立戦争以前、シャアやセイラが幼少の頃の物語。

それだけでもガンダムファンとしては興味を惹かれるところではあるが、個人的に特にグッと来たのが彼らの(そしてジオン公国の)父であるジオン・ズム・ダイクンの描かれ方。

ニュータイプの出現を予言し暗殺された偉大な指導者として、その後の作品では半ば聖人のような扱いとなっているダイクン。

だが、この巻で彼は狂人じみた主義者として描かれている。

そして、己が殺されることを知っているかのような、いやむしろそれ自体が主義の実現のための演出であるような台詞を口にしている。


いわゆるガンダム史的には「ザビ家がダイクンを暗殺し政権を奪取した」とされる。

少なくとも劇中のキャスバルはそう考えていたし、本作だってその印象を持って読めばそう読める。


だが、本作はそこに別の解釈の余地を加えてきたのが面白い。

今一度読み返してみると、むしろダイクンは主義者たちと共謀し「暗殺」に仕立てて独立の口実を作り、デギンはそれを利用、というよりはハナから協力者であったようにも読めるのだ。

指導者達はダイクンを神格化し、主義で国民を焚き付け、目論見通りに戦争が始まる。

そして、シャアという「主義の怪物」が生まれる。


この暗殺の部分についてシリーズ上では頑として「真実」が描かれない。

そしてデギンは黙したまま世を去るわけで、結局のところ僕達は作中の人物たち同様に想像するしかない。

歴史に真実は存在せず、示された事実の解釈が人々を駆動する。

このあたりのリアルさが、ガンダムという作品の類稀なる魅力だと思う。


富野さんのガンダムシリーズって僕なりには国家とか主義とか思想みたいな「大きいモノ」に動かされる人間の愚かさを描いた作品なんだって思ってるんだけど、なまじ上手く描いちゃってるばかりにむしろそういうのにカッコよさを感じて憧れを抱いちゃうファンが沢山出てくるあたりが皮肉よなぁ。



全くノーマークだったんだけど、ガンタンク初期型の造形て戦闘車両っぽさがあって凄く好みだ。

総火演のときのこいつ↓連想した。

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それにしても、観よう観ようと思いつつ、なかなかアニメ観るタイミングがとれないorz