そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『楽園追放2.0 楽園残響 Godspeed You』感想

あまり広く告知されてなかった(?)せいか発売の直前に気づいたのだけど、ちゃんと買えてよかった。

楽園追放 2.0:楽園残響 -Godspeed You-(通常版)

楽園追放 2.0:楽園残響 -Godspeed You-(通常版)

本作は昨年末に公開された3Dアニメ映画『楽園追放』の続編にあたる物語。

ジェネシスアーク号は彼方の木星へと飛び去り、地球圏に平穏が訪れたかのように見えた。

だが、ディーヴァはフロンティアセッターへの恐れを捨てきれずジェネシスアーク号の追撃を画策し、 それを妨害するフロンティアセッターの残滓を殲滅するため、 アンジェラのバックアップからコピー人格を作り探索の任を与えた。

一方その頃、機雷除去任務に就いていた三人の学生はある物を発見し・・・


映画の感想で

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SF要素の話でいうと小説版でも述べたようにちょっと浅いかなと思う部分はあったし、 ディーヴァ周辺の描写はもっとあっても良かったかなとも感じた。

その辺をガチでやってくと「人格を複製」とか「リソースカット」とかもっとグロテスクな物語にはなっただろう。

けれど、逆に言えばそこをライトにしたのが「一般ウケ」を逸脱しないさじ加減だったと言えるのかもしれない。

という風に書いたのだけれど、まさにその辺りに焦点が当たった話となっている。

任務の達成だけを目的として生かされるアンジェラのコピー人格、 限られたリソースしか与えられず未来を制限された若者たち。

ディーヴァのディストピア的側面がより多く描かれている。

また、割とおぼろげだったアンジェラの生い立ちにも触れられており、 (ノベライズの冒頭のあれ、そういうことだったのね!) 当初なぜああも上昇志向や競争意識が強かったのかが分かる。

帯曰く「すべての外伝の総決算。」らしく(といいつつノベライズとmission.0しか無いよね?)、 アンジェラのライバルにあたるクリスティンや先輩であったメットが物語に絡んでくるあたり、 関連作品を押さえてたファンとしては嬉しいところ。


本作には他作品ネタが散りばめられていて、 それらを発見する楽しみもある。

僕が見つけたところだと

  • 二重言語: 古典的ディストピア小説『1984年』の用語。意味の異なる単語を重ねることによって言葉の持つ概念を破壊する。本作の場合は「言い換え」くらいのニュアンスだろうか。

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  • 「イカとクジラで、クジライカなんだって」:アニメ『 翠星のガルガンティア』より、人類の肉体的な進化の極地。こっちの作品も「人間とは」という問いがテーマとなっておりオススメ。

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  • 全自動著述機 ワーカム: 神林作品に出てくる、筆者の意図を読み取り文章を記述する機械。「言語」というものについて考える上で面白いガジェット。

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  • 独裁者スイッチ: 言わずと知れたドラえもんの名エピソード・ひみつ道具。

ドラえもん(1) (てんとう虫コミックス)

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あたりだろうか。


全体を通してみると、「Botのように生きたくはない」とか「非合理的」の話とか、 なるほど関連書籍で虚淵氏が常々語るところの「人間とは何か」というテーマ性を見事に継承した作品になっているように感じた。

物語としても、きっちり続編としての役割を果たしながら、 同時に本編で描ききれていなかった部分が丁寧に補完されており、 ファンとしてはなかなか楽しめた。

『楽園追放』が好きな方なら、是非とも関連二冊を読破の上で読んでみることをオススメしたい。

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楽園追放2.0 楽園残響 ―Godspeed You― (ハヤカワ文庫JA)

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