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そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『リスを実装する』感想

短編ということで通勤時間にサクッと読める分量なのだが、その中にもしっかりと円城塔的なエッセンスが含まれていて面白い。

リスを実装する (Kindle Single)

リスを実装する (Kindle Single)

職業がらあらゆることを「自動化」していく物語には単純に共感できた。

エンジニアリングに関わる人間であれば大なり小なり同じ感覚をもっているものだと思うが、 僕は"アルゴリズム"や"システム"という概念自体が好きだったりする。

ITの分野に限らず機械や組織やあるいは物語について、仕組みや成り立ちとそれらの個別の機能が集合して何かをなす広義の意味でのシステムというものに、ある種のフェティシズムを抱くのだ。


人の存在を廃していく「自動化」という行為は一見すると人間性の否定のようにも見えるかもしれない。

だが、思考を分解し、コードを記し、機能を代替させるという行為の中で、どこか己の分身を残していくような感覚を覚えたりもする。

それは見方によってはひどく生物的な快楽のようにも思える。


だが、逆説的にいえば、確固たるものに思える「人間性」や「生物性」というもの自体があやふやなものだとも考えられる。

乱数じかけのリスに意識の存在を感じるのは観測側の意識の投影に過ぎない。

であれば、その観測側の意識の存在証明はいかにしてなされるのか?


実のところこれまで円城塔の作品には苦手意識があった。

物語そのものをメタ的に扱う実験性や思考というものに対する深い洞察など「面白そう」な感じは掴めるものの、それがどうにも自分の中での実感としての「面白さ」に繋がらないことにある種のコンプレックスすら感じていたのだ。

その点本作は氏の作品としては読みやすく、純粋に楽しむことができた。


リスを実装する (Kindle Single)

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根気があまり続かないタイプの人間としては、Kindle Singleという短編を少額する仕組みは興味深いですな。

デジタルオーディオ販売によりアルバムではなく気に入った曲だけを買えるようになったように、短編小説もこの形式でどんどん気軽に買えるようになったら良いなと思う。


ちなみに本作はKindleオーナーズライブラリでも読める。

Kindle Paperwhite (ニューモデル) Wi-Fi

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