そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『BLAME! THE ANTHOLOGY』感想

 BLAME!の延々と続く都市構造物を舞台としたアンソロジー小説集。BLAME!という作品は「背景が主役」などと評されたりするが、このアンソロジーでもそれを反映してか全ての作品が本編の登場人物達が直接関わることのない別の場所で展開する物語となっている。

BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA)

BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA)

九岡 望「はぐれ者のブルー」

 映画でも題材となっていた電基漁師を主人公とした物語。

  厳しい生活の中にあって青い塗料を集める電基漁師の鈍丸、人を狩るという使命よりも好奇心を優先する珪素生物のアグラ。はぐれ者が二人が出会い、奇妙な道連れの冒険が始まる。

 漫画的なスペクタクル感ある描写が心地よい。本能と文化の形成。

小川 一水「破綻円盤 ーDisc Crashー」

 BLAME!の前日譚ともいうべきスピンオフ『NOiSE』では増殖する都市が月を取り込んでいる様が描写されているように、都市構造物は宇宙的規模で広がっている。

NOiSE (アフタヌーンコミックス)

NOiSE (アフタヌーンコミックス)

(タイトルにBLAME!のブの字も付かないから見逃すところだったので二瓶ファンの同僚に教えてもらって助かった。珪素生物やセーフガードの起源なんかが描写されてて、コレ読むとBLAME!の世界観が色々飲み込める。)

 登場する人間はもちろんのこと、珪素生物や統治局にとっても都市の内部こそが世界の全てであり、とかくBLAME!という物語において都市構造物の外形は描写されることが無い。では恒星すらも取り込む構造物はいかなる形をしているのか。この作品はそんな謎に魅せられた者達の物語である。

 宇宙ものの著作を出している作家さんらしく、「太陽系サイズ」という途方も無い構造物への想像力が面白い。

野崎 まど「乱暴な安全装置 ー涙の接続者支援箱ー」

 さながら時代劇のような人情世界で展開される、BLAME!的不条理。

 正直なところ物語のノリの違和感もあったのだが、しかしそれをごっそりひっくり返す結末は、考えてみれば実にBLAME!らしいという気もしてくる。(個人的には乾人と運び屋あたりのノリを彷彿とさせられた)

新装版 BLAME!(1) (アフタヌーンコミックス)

新装版 BLAME!(1) (アフタヌーンコミックス)

酉島 伝法「堕天の塔」

 統治局により月を発掘するために作られた代理構成体の一団。彼らは「光」に巻き込まれ、果てしなく落下を続ける塔へと囚われることになった。

 閉所に留まりながらにして遙かなる階層を旅をすることになった者達。

飛 浩隆「射線」

 都市構造物には人の他に珪素生物・統治局・企業AIと様々な知性体が息づいている。霧亥が消息を絶った2000年後、都市構造内の環境を保つ「機能」だった物達にも意識が芽生え・・・

 異種知性体の時間的にも空間的にも人知を越えた壮大なスケールの物語がなんとも新鮮。



 全体的に異種知性体や人知を越えた構造物といったSF的な題材の面白さがある反面で、キャラクターが出しゃばってくるとどうにもしっくり来ないように感じてしまったのが正直なところ。それだけ原作が強烈な印象を持っているということかもしれない。

BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA)

BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA)