そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『ドリーム(原題: Hidden Figures)』感想

 邦題のサブタイトルで一悶着あったあの映画。建前上の平等はあれど差別意識が色濃く残る60年代での、3人の女性のマーキュリー計画での活躍を描いた作品である。

ドリーム NASAを支えた名もなき計算手たち (ハーパーBOOKS)

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  • 作者: マーゴット・リーシェタリー,山北めぐみ
  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
  • 発売日: 2017/08/17
  • メディア: 文庫
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 本作においていくつものエピソードで描かれるように、差別はする側からは見えにくい。 トイレや飲水は人種ごとに「区分」され、社会に組み込まれ固定観念となっている。制度上の自由は保証されてはいても、そこまでいたる機会が制限されている。(このあたりは話は少し前のGoogle社員のメモの件について語ったRebuild.fmの188回が興味深い。)

rebuild.fm

 必ずしも悪意はなくとも、それが固定観念としてこびりついていると強固な壁となる。それを取り払うには大きな勇気と地道な努力が必要なのだ。


 本作の3人の女性は、果敢に壁に立ち向かっていく。攻撃的な反発ではなく、類稀なる才能と時代を読んだ機転により、実力で社会に存在意義を認めさせたのだ。ストーリーとしては端の話になるけど、個人的には計算士がIBMの納入によって職が失われることを見越し、先んじてFortranを学びプログラマという道を切り出すところには心惹かれるものがあった。

 この手の「反差別」の物語というとヒューマニズムの文脈に頼った作品が多い。もちろんそれはそれで尊重すべき価値観ではあるけれど、道徳観というのは時代で変わるものなので、今の価値観で昔を上から目線で評価するような物語にはリアリティが無くて僕は鼻白んでしまう。 本作はそういうところに寄り掛からない形で描かれているのが良かった。実利実力を求められる現場において「差別」は非効率なのだ。


 そんなわけで面白かったは面白かったんだけど、一方で一映像作品としてみると各エピソードが結末の一本の線に収束していく感じではなく、あまり物語としての美感は感じられなかった。何度も見直したくなる類のものではなく、評判にはいささかのヨイショが入っているように思ってしまったのが正直なところ。(平和とか平等とかをテーマとして唱えさえすれば下駄が履かされる感じってあまり好きじゃない。)


 サブタイトルになる予定だった「私たちのアポロ計画」がトンチンカンなのはもちろんだけど、個人的には「ドリーム」というメインタイトルも、キング牧師の演説と掛けているのは分かるんだけど、実力で結果を掴み取った物語の趣旨からするとどうかと思うんだよね。

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