そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

アニメ『新世界より』感想、「やさしい社会」の暴力

録画消化週間。

「新世界より」 一 [Blu-ray]

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若干ネタバレあり。


あらすじ


新世界よりPrelude#1 - YouTube

1000年後の日本。人類は「呪力」と呼ばれる超能力を身に着けていた。注連縄に囲まれた自然豊かな集落「神栖66町」では、人々はバケネズミと呼ばれる生物を使役し、平和な生活を送っていた。その町に生まれた12歳の少女・渡辺早季は、同級生たちと町の外へ出かけ、先史文明が遺した図書館の自走型端末「ミノシロモドキ」と出会う。そこから彼女たちは、1000年前の文明が崩壊した理由と、現在に至るまでの歴史を知ってしまう。禁断の知識を得て、早季たちを取り巻く仮初めの平和は少しずつ歪んでいく。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%82%88%E3%82%8A_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC)

「やさしい社会」の排他性、身内意識の外側

自然に囲まれ、科学技術を最小限にとどめ、人々は協調して暮らし、、、と、ある種の人たちにとっては魅力的な社会に映るかもしれない。

しかし、その社会は過度に力を持つ「個人」を阻害することにより維持され、またバケネズミという二級市民を作り出すことによって成り立っている。


バケネズミの造詣、「生理的」嫌悪感

ハダカデバネズミをモチーフにした禍々しいキャラクター造詣は秀逸だと思う。

その姿は汚く醜く臭く、見る者に生理的な嫌悪感を催す。

如何にそれが対話可能な存在であったとしても、意図せずとも自分とは異質な存在として「壁」を生み出してしまう。


アパルトヘイトをモチーフとした『第9地区』のエビ型異星人への迫害でも同様のテーマが示される。

【数量限定生産】第9地区 ブルーレイ版スチールブック仕様 [Blu-ray]

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義務教育の道徳レベルの「話せば分かる」では解決できない、感情移入の壁。

まおゆうなんかも、魔王が人型の美女でもなければ成り立たないはずだ。


そして、それが一度文化的な正統性を得てしまうと、嫌悪感がさも「自然」で「当然」なものとして受け入れてしまう。

しかし実のところ、真里亞の子供の「認識」にみられるように、そのような美醜感は文化性による後天的なものに過ぎない。




それぞれの「身内」

この物語のキャラクターの行動原理には常に身内意識と共にある。

早季:班の友達〜町の人々
奇狼丸:コロニー
スクィーラ:バケネズミという種

各々「身内」のための最善を尽くそうとする。

それは友情だったり社会性だったり、あるいは生存の本能に突き動かされた結果であり、その範囲が狭ければ愚かで広ければ尊いというわけでもなく、それそれに正当性がある。

誰しもが無意識に形成している領域であり、本作においては「人々」の身内意識は恐ろしく強固なのであるが、だからこそ外に対しては驚くほど残酷にもなれる。


想像力がすべてを変える

「想像力がすべてを変える」本作は最後にこの言葉で締めくくられる。

義務教育の道徳レベルの話であれば「差別せずに皆で友達になりましょう」となるが、現実はそれほど甘くはない。

共感できる対象には限界があるし、身内意識は強固であれば強固であるほどにその境界も濃くなる。

Mr.Childrenが『掌』で「一つにならなくて良いよ、認め合うことができればさ」と歌うように、そこに境界があることを知った上で、相手の立場を「想像」し、地道に問題に対処していくより他ないのかもしれない。

掌 / くるみ

掌 / くるみ





感想

正直な所、本作の前半は非常にかったるい。

ディストピアものは世界観がキモである以上、本題に入る前に説明的な要素が多くなるのは致し方ないことではあるが、しかし本作に関して週刊30分アニメの尺で処理するにはかなり厳しかったように思う。

しかし、話が本題に入って以降、バケネズミとの遭遇からの展開は見事の一言である。

アニメを観るために徹夜したのは学生以来だ。

この手の作品では現代的な価値観を持った読み手の感情移入先が用意されて世界の歪みを明かしていくのが常であり、この話では主人公である早季がその役割を担うものの、その早季すらも「歪み」と一体であり、また感情移入を許さないスクィーラこそが実は我々読み手の化身だったというところが実に秀逸だと思う。

記憶が薄れた頃には是非原作小説も読んでみたいと思った。

新世界より(上) (講談社文庫)

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新世界より(中) (講談社文庫)

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新世界より(下) (講談社文庫)

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どうでもよいこと

僕の中では「面白い作品は何度か観たいから録画消せない」→「新しい録画をしたいから容量減らさなきゃ」→「安心して消せる程度のそこそこの作品から消化する」という心理が働いて、期待値の高い作品ほど見れなくなるというアレな状況になっている今日この頃。

BDに書き出すやつ買いたいけど、どうも単体でなんとかする手段は無くてPC経由で書きだすしか無さそう。

Windows専用なのだが、最近Macばっか使っていて今後もWindowsPCを保有するかだいぶ怪しいので、買うべきが凄く迷う。