荒廃した地球とコロニー、ロボットとSF兵器、格差社会と差別意識。
『第9地区』の監督の次作だということを踏まえなければ面白い映画だった。
あらすじ
全土がスラムと化した地球と、それを見下ろすコロニー「エリジウム」が舞台。
主人公マックスは、そんな荒廃した地球でロボット工場での勤めで日々の口糊をしのいでいる前科持ちの若者。
ある日マックスが工場で命に関わるほどの放射線事故に遭い、残された寿命はわずか5日となってしまう。
エリジウムに住むブルジョア達の邸宅には、どんな怪我や病気でも治せるカプセルが設置されている。
そこでマックスはエリジウムに渡るため、密航船を取り仕切るゴロツキの首領スパイダーと、密航船への乗船の見返りにエリジウム市民である工場のオーナーの頭脳のデータを強奪してくるという取引をする。
自身の体をパワードスーツで強化(この手術が凄い!)し、地球に降下しているエリジウム市民の誘拐を企てるマックス達。
しかし、強奪したデータには、エリジウムの体制を揺るがす程の重大な陰謀が隠されており・・・
役者
今回主人公を演じるのは『ボーン・アイデンティティ』以降アクション俳優としての貫禄が出てきたマット・デイモン。
『ボーン〜』シリーズではスパイらしい洗練されたアクションを演じていたのに対し、本作ではちゃんと「パワードスーツのアシストにより力だけはあるけれど戦闘は素人」っぽい力任せなアクションを演じているから凄い。
敵役のエリジウム防衛庁長官には、美熟女という表現がビッタリ来るようになったジョディ・フォスター。
本作のテーマとなっている社会構造を裏付ける役どころのはずなんだけれど、存外登場するシーンが少なく、なぜ狂的なまでに差別意識を持っていたのか掘り下げ不足なのが残念。 このキャラクターのバックボーンについてもっと描写があっても良かったのになーとは思う。
そしてターミネーターのように主人公を追い詰めるエージェントには、『第9地区』では主人公を勤めたシャールト・コプリー。
『第9地区』ではひょろっひょろの会社員としてテンパった様子が絶品だったが、本作ではすっかり狂気のアウトローとなり、メタルギアソリッドの雷電よろしくパワードスーツを装着したサイバー忍者として手裏剣を投げたり日本刀を振るったりの大立ち回りを演じる。
前作との比較
前作『第9地区』は「南アフリカにUFOがやってきたら」という仮定の元、割と現代的な舞台と会社員という、非常に没入しやすい作品だった。
そして、ドキュメンタリー風味の体裁をとり、ほとんど主人公側からの視点のみを描くことにより、不慮の事故によって差別する側から差別される側へと転落してしまった主人公がもがき苦しむ様に妙なリアリティーを感じられた。
一方本作はというと、舞台は遠い未来でSFガジェットも多く出てきており、舞台的にもSF的にもスケールアップしたため前作ほど没入感はない割に、特にドキュメンタリー風でもないのに主人公側からの視点に偏重していて敵や周辺のキャラへの描写は薄めなのが不満なところ。
前作では後半に入ってやっとSFアクションが登場するのに対し、本作では序盤からパワードスーツと未来兵器による戦闘が楽しめるのが救いどころ。
前作は「どうあっても生理的に受け入れがたいエイリアンへの感情移入」という驚きがあったことを考えると、本作は題材自体ちょっとパンチが足りない印象がある。
話の筋自体も前作同様に「当初は利己的だった男が最終的に利他の精神に目覚める」という流れなため、前作が『第9地区』じゃなければなぁという評価になってしまうのはいたしかなたい所。
- メディア: DVD
- この商品を含むブログを見る
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2011/04/21
- メディア: Blu-ray
- 購入: 2人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (24件) を見る
個人的には旧作のトータル・リコールのタクシー運転手っぽい「いかにも人形」なロボットが、あちらではあくまで「使えない道具」だったのに対し、こちらでは面接官として「人間よりも上の立場」になっているのが面白かった。
あとどうでも良いけど、本編前のまどマギの宣伝に凄くワクワクした。
- 出版社/メーカー: ムービック
- 発売日: 2013/12/31
- メディア: おもちゃ&ホビー
- この商品を含むブログ (1件) を見る