ここのところ関わる仕事で大きめの構造的欠陥を見つけることが多い今日この頃。
潜在的な問題を見つけるのは悪いことではないし、上司にもそれなりに感謝されるけど、一方で具体的な「犯人」を作ってしまう場合もあるわけで、何とも切ないところ。
さて、久々に漫画の話題。
今回読んだのは沙村広明氏の新刊(というには積みすぎた気がする)『幻想ギネコクラシー』。
- 作者: 沙村広明
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2014/03/26
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氏は数少ない僕が「作家買い」する漫画作家さんだったりする。
代表作『無限の住人』のような殺伐としたアクションから竹易てあし名義での『おひっこし』のようなコメディー、そして何と言っても『ブラッドハーレーの馬車』のような嗜虐的なエロまで手広くカバーしている作家ではあるのだけど、それらの中にも何となく「退廃的な美しさ」が一貫して感じられるから不思議。
- 作者: 沙村広明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/06/19
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パロディ満載のコメディ作品ですら、そこはかとなく物語としての収まりの良さを感じるんよね。
本作はその中ではコメディとエロのちょうど中間を行った短篇集といえるかもしれない。
雰囲気は前の短編の『シスタージェネレーター』に近いのだけれど、全てにおいて何かしらの形で若干のエロ要素が関わっている。
シスタージェネレーター 沙村広明短編集 (アフタヌーンKC)
- 作者: 沙村広明
- 出版社/メーカー: 講談社
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エロ漫画みたいなのではないけど、職場で開くのはちょっと憚られる系。
とある童話をパロった『筒井筒』や「目を覚ますと棺桶の中、助けを求めたら級友が掘り出してくれたけど・・・」な『殺し屋リジィの追憶』などなど。
別に読んだって感動する類の「良い話」ではないし、SF的ギミックに好奇心をそそられるものでもない。
何か前提とする教養が必要でもないし、読んだ後に何が残るでもない。
でも、その一話一話の収まりの良さに、何かエンタメとしての美意識のようなものを感じるのだ。
さて、本作を読んで先に述べた「退廃的な美しさ」や「物語としての収まりの良さ」みたいなことを考えていると、僕は学生の頃に受けた坂口安吾の『ふるさと』をテーマにした授業を連想した。
曰く、童話『赤頭巾』の元々の結末には猟師がやって来て狼の腹から生還する展開はなく、ただただ可哀相な老婆と少女が狼に食べられて終わりという、因果応報も勧善懲悪も無い物語だったそうだ。
でも、そういう「むなしさ」「やりきれなさ」の中にこそ文学の根源があり、そういった現実に立脚してこそ物語は力を持って云々・・・
まぁ小難しい話はともかく、意図的に教訓もモラルが排除された、ある種の美意識のようなものを感じるのだ。
そんなわけで、万人には勧めづらいし、かと言ってどんな人になら刺さるかはとんと分からないけれど、個人的には結構面白かったですよ『幻想ギネコクラシー 1』。
続刊が楽しみ。
あと『ベアゲルター』2巻はいつ出るのかねー。
- 作者: 沙村広明
- 出版社/メーカー: 講談社
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