ついにシリーズも三作目。
個人的には「どうせ最後は無敵のハイレグ少佐がなんとかしてくれるんだろ」な他のシリーズとは違い、騙され間違える「草薙素子」像はなかなかスリリングで面白く思う。
SFサスペンスなborder1、アクションのborder2と比べると今回映像的には地味な印象を受けるが、しかし示された情報量はかなり多く、border4への「溜め」として楽しみな作りとなっていた。
そんなこんなで以下ネタバレあります、注意。
素子の過去
ARISEシリーズ自体「9課結成までを描いた物語」と称しているが、今回特に主要な要素として触れられたのが素子の過去である。
原作であれ映画であれ、またSACであれ、素子の素性って「幼いころに大きな事故に遭い、天涯孤独で全身義体」「かつて軍属で少佐だった」という要素では一致していても、詳細については殆ど触れられていなかった。
そういう「説明しないことによる説明」によって少佐の全知全能感に説得力を持たせていた部分があるのだけれど、今回のARISE border3では挑戦的にその辺りに焦点を当ててきた。
戦争と日本
もうひとつ攻殻機動隊という物語のバックグラウンドとして共通して使用されているのが「戦争」というキーワード。
これにより義体技術が進歩が促されたという理由付けにしたり、日本の立ち位置を示したりといった道具として使われてきたのだが、今回のborder3まで追ってきてみるにAriseシリーズはその戦争こそが本筋となっていそうだ。
劇中の日本は一見既に戦後という雰囲気もなく見えるが、ARISEはborder1から全てその戦争に絡んだ話である。
スクラサス
民族紛争の地「クザン共和国」で少佐は「スクラサス」として活動していた。
現地の民兵を教育してゲリラを指揮していた。
これは劇中の中佐との会話から察する限り、軍部の意向を受けた作戦だったのだろう。
そして、戦争の継続が不要になるとスクラサスは「殺害」され、「少佐」となった。
ファイアスターター
しかし、殺したはずのスクラサスは、戦士を生産するウイルス「ファイアスターター」として蘇る。
恐らくこれは戦争を継続させることに利益を得る者、シリーズ当初から名前のチラついていた「武器密輸ブローカー」絡みなのだろう。
少佐にとっては「過去の自分を葬る」という物語になってきた。
残された要素
今回のborder3で少佐の戦中の足跡が朧げながら示され、またシリーズとして「軍の暗部を葬りたい501機関 vs 利益関係を継続させたい武器ブローカー vs 謎を暴きたい9課」という対立軸が形作られたわけだが、恐らくそう簡単に収める話ではないのだろう。
boder2でのAIヴィヴィーの存在、今回出てきた人間味のない少女。
そして素子に感染したままのウイルス。
攻殻機動隊シリーズを熱心に追ってるファン的には「ああ、きっと過去の自分の記憶が人格持ったのが・・・」とか「きっと人外との結合によって力を得る展開が・・・」とか想像の膨らむ所ではあるが、ともあれシリーズの完結編となるborder4が楽しみである。
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