公開当時、映画館に行こうか迷った挙句見送ったのだが、これは劇場に観に行っても後悔しなかったなー。
三谷監督お得意のコメディでありながらもどこか戦国の恐ろしさが漂う、そんな不思議な雰囲気の映画だった。
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本作は本能寺の変の後、織田家の後継や領地分配を決めた清州会議を題材とした映画。
家臣の筆頭であり強い発言力を持つ柴田勝家陣営に対し、羽柴秀吉はあの手この手で対抗していく。
時におどけ時に報酬で釣り、着々と味方を増やしてゆく。
無骨で愚直な勝家には視聴者としては好感を覚えるものの、確かに一緒にいて得も無ければ楽しくも無さである。
一方の秀吉は、見るからにお調子者でいつも感情を露わにし、目下の者にも酒を振る舞う愛想の良さをみせ、直接会議とは関係のない所でも支持を集めていく。
その時々で感情を露わにして喜び悔しがる秀吉は、なるほど愛嬌があって近くにいれば楽しそうである。
だが、その裏には緻密な計算があり、妻以外には見せない本心があるのだ。
(このあたり、役者陣が本当に良い演技をしている)
コメディ仕立てでありながらも舞台は戦国であり、血が流れないだけで命がけの政治闘争であることには変わりがない。
笑いの後にどこか空恐ろしさもある、そんな不思議な後味のある映画だった。
僕自身はといえば「コミュ力」とか「飲みニケーション」とかいったものが嫌いだしどうしようもなく苦手で、基本的にそういったものに対しては否定的な立場でものを言うことが多いのだが、本作では否応なくそれらが大きな力を持っていることを再認識させられた。
さて、最後になるが、ある意味本作で一番驚かされたのが松姫役の剛力彩芽である。
可愛い役をやるにはルックスが足りず、賢そうな役をやっても知能指数が低めに見えてしまい、正直あまり役者としては評価していなかったのだが、本作では非常に上手く松姫の役にハマっている。
引眉お歯黒という、現代人には奇怪に見えるメイクながらも現代的な「可愛らしさ」のニュアンスをとどめ、その一方で「不気味さ」も適切に演じている。
出番としてはそれほど多くは無いが、本作で強いインパクトを残す良い仕事をしている。
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