本編、ノベライズ、アンソロジー集と追ってきたので、折角だからということで読んでみた。
本作は映画『楽園追放』の前日譚、新人エージェントのアンジェラが遭遇した電脳社会ディーバの存続を揺るがす事件を題材とした物語。
- 作者: 手代木正太郎,齋藤将嗣,ニトロプラス・東映アニメーション
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/10/17
- メディア: 文庫
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本編ではあっさりとしか登場しなかったディーバが舞台ということで、その「情報体となった人類の社会」がどう描かれるのかについて期待をもって読んでいたのだが、正直がっかりだったなという印象。
怪物的なキャラクターが出てきて、それをアンジェラ達がプログラムと称する光弾なり光壁なりでバトルし・・・という描写はありがちといえばありがちではある。
しかし、「メモリ」だとか「圧縮保存」だとかいったそれっぽさとのバランスを考えると、ちょっと考証が甘いというか設定を活かせてないように思えてならない。
これが昨今流行のネットゲームが舞台だったらまだ良い。現実の身体性を模し、それを逸脱しないように制限をかけていることに説得力がある。
だが、映画の描写を見る限り、少なくともエージェントに関してはその軛は無いはずだ。
以前の記事でもそんなことを書いたが、「情報体」となれば身体性も全然変わってくるはずなわけで、そのあたりに物足りなさを覚えてしまった。
「無限ループによるオーバーバッファロー」などそれらしくしようという努力は垣間見られるものの、それほど効果的に使われているようには感じられなかった。
また、別に設定上「中立の神」が存在するわけでもなく普通に人類がコントロールできている舞台なわけで、そもそもそういう犯罪が成り立つのかという部分にもあまり納得感を得られなかった。
とはいえ、最後に得られた解答には映画に繋がるメッセージ性が込められている。
与えられた楽園に満足せず、新たな楽園を探し求めるからこその「人間」なのだ。
しかし、本作によるなら人格の複製が可能なのね。
それだと映画本編の様々な問題の意味が無くなってしまうのが気がかりな所。