- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2011/12/02
- メディア: Blu-ray
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世間的にはさほど評価の高い作品でもないんだけど、どうにもここ最近の社会情勢とリンクするものが感じられて興味深かった。
非実在小学四年生事件に官邸ドローン事件、諸々のデマに傍若無人なデモ。
ここのところ、正義を語る馬鹿による「やらかし」が多く見られるようになってきた気がする。
まだ鼻で笑って馬鹿にできる程度なので良いのだが、これがかつての運動のように先鋭化していくと恐ろしい。
普通に考えればどこかで歯止めがかかってしかるべきなのに、主義に殉じてどんどん過激になっていく。
そんな活動家の事情を本作は描き出しているように思う。
あらすじ
若き記者の沢田は新左翼にシンパシーを感じながらも、その思いを仕事で果たすことができず不満を抱えていた。
そんなある日、梅山と名乗る活動家と出会い、読書や音楽の共通の趣味から親近感を覚え親交を深めていく。
半ば協力にも近い形で彼らの活動を取材を行う中で、ある事件へと巻き込まれていくこととなる。
ルサンチマン
本作において度々出てくるのが「あいつは偽物だ」「お前は何者か」「俺は本物になりたい」といった台詞。
嘘偽り建前ばかりの大人を嫌い、純粋さを求め足掻く若者たち。
それを食い扶持として無責任に煽るマスメディア。
商業的な打算ばかりではない。
文学は病的なものにすら面白味を見出し、いたずらに持ち上げてしまう。
言論の自由を標榜する国家においてはそれを批判することはできても否定はできない。
それに乗せられ、純粋さをアピールするために、本気度を誇示するために、そしてヒエラルキーの上位に立つために留まるところを知らず先鋭化していく活動家たち。
「梅山」
大義を掲げ詭弁を弄して周囲を道具にしながらも、梅山が求めたのは結局のところ「革命の英雄になりたい」という欲求でしかなかった。
「運動」に実社会に存在しない純粋さを夢見るが、結局は口の上手い人たらしが愚直な者を自己実現の道具とする構造でしかないのだ。
英雄という存在は社会にとって有益とされる行為をなすことにより成立する。
大義のまやかしが解けると、そこに残ったのは単なる残虐な行為でしかない。
いかなるイデオロギーも「人」に優先されるものではない。
「人」を軽んじてしまった時点で、彼らに穏当なゴールは無くなってしまったのだ。
沢田
本作は沢田の視点から描かれているため、一見すると「純朴な記者が狡猾な活動家に良いように騙された」話に見える。
だが、その実は沢田も「本物のジャーナリスト」になりたいがために梅山を利用したともいえる。
純粋で綺麗なものを目指しながら、それと気付かずに汚れていってしまう。
そんな切なさが描かれている。