「ガッチャマン」という看板の意表を突いて、現代的なテーマ設定で面白かった『ガッチャマン クラウズ』。
その2期が開始されたので、早速観てみた&そういえば前作のBOX買ったくせに感想まとめてなかったのでそっちも。
スマホの時代
本シリーズを端的に表現すると、「スマホの時代」を反映したアニメといえるだろう。
これまでにもITや携帯がキーとなるアニメはあったが、あくまで無数の聴衆としてというものが多く、ここまで「普通の人々」が物語を動かすプレイヤーとして絡むんでくるものは珍しいように思う。
「クラウズ」という、普通の人々が手にする力。
これはさながら今生のソーシャルネットワークを思わせる。
正規のヒーローである「ガッチャマン」よりは弱くとも、それまでの「一人力」よりは遥かに強い。
僕がこの物語にひどく感銘を受けたのは、そこはかとなく梅田望夫的「Web2.0の理想」の匂いを感じるからだ。
(何を隠そう僕自身、この「ウェブ進化論」にかなり影響を受けてるわけで・・・)
技術が自由と力を与え、人を新たなステージへと導くテクノロジーの神話。
正しく用いれば大きな力ともなるが、悪用すれば世を混乱に陥れることもある。
作中でも、暴走した正義感からのクラウズによる犯罪が物語の山場となる。
このあたりは震災以降今だに続くソーシャル界隈のゴタゴタを思わせる。
(梅田望夫自身、「日本のWebは残念」といっていたのを思い出させられる。 日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編)(1/3 ページ) - ITmedia NEWS)
クラウズvsクラウズの展開に、「Webの理想」と「残念な現実」の相剋を感じるのだ。
そして、大衆をゲーミフィケーションにより導くという発想も実に現代的であった。
反クラウズ運動「VAPE」
インサイト0話で新たに示されたのが、反クラウズ運動「VAPE」。
新たな自由・新たな力に対し、社会は多かれ少なかれ必ず反作用を生み出す。
そこはかとなくネットの自由派と規制派の闘争に重なって感じられる。
世の中を支配する「空気」
インサイト1話。
僕なりに違和感があったのが(おそらく意図してそうしていたのではと思っているのが)、作中の人々の妙な同調感。
いくらなんでも「ガッチャマン」や「はじめちゃん」という存在に世間が好意的であるということ。
(前作では作中でも変人として扱われてたから許せたけれど、今作だと皆すんなり受け入れちゃうせいかむしろうざったく感じられるのな・・・)
今作で物語を駆動するのが、人々の心理を視覚化する「ゲルサドラ」。
誰しも普段は異なる思い=色をしており、これが同じになる=一つの思いになることを「善い」とする。
実に義務教育的「仲良し」の感覚である。
そして、新たなガッチャマンである「つばさ」はその価値観に同調する。
だが、確固たるものを持った「はじめちゃん」や「おじいちゃん」は同じ色に染まらない。
世の中を支配する「空気」。
おそらく同じ色に染まらないものを敵視し・・・という流れになるのだろうなと思うが、さてどのように収めてくるか。
「多様性を認めよう」みたいなところに収めるのが順当なところではあるが、そこに今作ではどんな現代的なロジックを用いてくるかが実に興味深い。
ガッチャマンvsガッチャマン?
少し気になったのが、「ジョーさん」がエリート的な発言をしていたこと。
いや、政治家秘書だからエリートもエリートなんだけど、そういう肩書的な意味じゃなくて「少数の優れたものが大衆を導く」的な発想がね。
おそらくこれは、あらゆる意思を受け止めるスタンスの「はじめちゃん」の発想とは合致しないだろう。
そして「累」の「GALAX」と「総裁X」を用いて民衆の意思を吸い上げ実現するボトムアップ式の「社会のアップデート」の発想とも異なるだろう。
きっとガッチャマンvs ガッチャマンみたいな構図が展開されるんじゃないかと思うので、そのあたりのケリの付け方も期待が膨らむ。
何をもって「正義」とするか。
民主主義の現代国家においては「民意」は最も尊重すべき要素ではあるが、それが必ずしもいつも正しい道を選びとるとは限らない。
だからといって一部の「賢い者」に全てを委ねるべきかといえばそれも違う。
現代社会においては「社会に最大限の利益をもたらす選択」をそう呼べるかもしれないが、ならばその価値判断は誰が行うのか?
このあたりは最近個人的にヒットしてるテーマ設定だったりする。
しかし、前回の売上が良かったのか、今回は4巻売りなんですなー。
前回のではBoxが放映後すぐに、しかも安価に発売されたのもあって買おうと思った部分もあったんだが、今回はどうするか悩む。
そういえばRebuild.fmで紹介されてたんだけど、↓の本がWebのテクノロジー神話への反論的な内容になってて面白いらしい。
何か買う機会に一緒にポチってみようかと思う。