そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『火星の人』感想

不幸にも火星に取り残されてしまった宇宙飛行士のサバイバルの物語。

火星の人

火星の人

主人公マーク・ワトニーは植物学者でありエンジニアでもある宇宙飛行士。

3度目の火星有人探査ミッション「アレス3」に参加し、他に4人の飛行士と共に火星を訪れていた。

だが、火星に着いて早々にチームは嵐に遭い、ミッションの継続は不可能との判断から帰還命令が下される。

地球への撤退作業のなか、マークは不幸にも事故に巻き込まれて気を失い、チームは彼が死んだものと誤認して離陸してしまう。

ひとり火星に残されたマークは、残された僅かな物資と植物学者やエンジニアとしての知識、そして持ち前のユーモアを頼りに、命をかけたサバイバルを開始する。


緻密な考証にワクワク

本作の一番の魅力は、なんといっても火星環境や探査ミッションの緻密な考証だろう。

火星でのサバイバルにおいては、地球で暮らす上では当たり前のものごとが困難な壁として立ちはだかってくる。

空気や水、食料。

僅かな備蓄だけでは到底足りない。

手持ちの機材を活用し、持てる知識をフル動員し、救助を待つ期間を食いつなぐ。

そして地球との通信手段の確立。

この「解決法」には、少年期にリアルタイムでニュースを見ていた人間としてはちょっと感動してしまった。

絶望的な状況を知識と工夫とで解決していく様は、理工系の人間として否が応でもワクワクしてしまう。


様々な「優秀さ」

この物語は火星に取り残されたマークのサバイバルの物語であると同時に、彼の存在に気づき何とか救出しようとする人々の群像劇でもある。

司令部となっているNASAだけでも様々な人々がいる。

様々な立場があり、様々な打算があり、様々なプロ意識があり、様々な優秀さがある。

そういった色々な人たちの個性がぶつかり合いながら、それでいて「マークを助けよう」という共通の意思をもって協調していく。

このあたりの群像劇としての面白さは、少し前に読んだ『オービタル・クラウド』とも通じるものがある。

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そして、「優秀さ」という観点からいえば、マークのユーモアを忘れず・冷静さを失わず・人を責めないキャラクター性も「優秀さ」としてカウントできるだろう。

どんな困難な状況でも絶望せず、解決へ向けて一歩ずつ進んでいく力の源。

社会人となり望むと望まぬと人とぶつかり合いながら仕事をしていると、そういったポジティブさこそが貴重なものなのだと気付かされるのだ。

このあたりは内向的な人間としては素直に見習いたいなと思うところ。



火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

ページを進めるごとにワクワクし、ハラハラし、そしてふとした一文に感動させられる小説だった。

邦題『オデッセイ』として日本での映画公開も控えている本作。

来年2月予定とのことなので、楽しみに待ちたい。


追記:観てきた

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