正月休みだし何か新しい漫画に手を出してみようかなーということで、 綺麗に6巻で完結してる本作を読んでみた。
- 作者: うめ(小沢高広・妹尾朝子),松永肇一
- メディア: Kindle版
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本作はジョブズとウォズニアック、 二人の"スティーブ"を中心に据えて、 Apple創業からMacintosh発表までを描いた漫画。
破天荒で芸術家肌のジョブズと典型的な職人気質のウォズが、 様々な才能を巻き込み、業界の巨人たちを尻目に誰もまだ見ぬ「パーソナルコンピュータ」を世に生み出していく。
『東京トイボックス』でゲーム会社をアツく描いたうめ氏が作者なだけのことはあり、 「現実歪曲空間」なんかさながら能力バトルのような漫画的な表現を多様しつつも、 黎明期の空気感や熾烈な開発競争が描かれる。
- 作者: うめ
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ガレージから始めた会社が業界のパイオニアになり、 順調に急成長を遂げるが、 それと同時に悩みも増えていく。
自分の価値をどう位置づけるかに悩み、 クオリティとビジネスとのバランスに悩み、 肥大化する組織の運営に悩み・・・。
急成長を遂げるAppleに擦り寄る数多の魍魎に、 迫る巨人IBMの影、そして狡猾なビル・ゲイツの登場。
まだ見ぬ未来を思い描き、そこにビジネスの芽を発見し、 様々なタイプの天才がそれぞれの持ちえる力を活かして夢を実現していく。
エンジニアとして食ってる身としては非常にワクワクできる物語だった。
正直なところ『東京トイボックス』の方は熱血バンザイな雰囲気があまり好きでは無いんだけど、 本作の方は実話ベースなこともあって情熱の裏のクレバーな戦略なんかが描かれていて面白かった。
物語として絵になるのは間違いなくジョブズの方ではあるんだけど、 ソフトウェアエンジニア的にグッとくるのはビル・ゲイツの先見の明と商才の方かもなー。
スキルのない立場から現場に無茶を押し通すジョブス像って、 ともするとダメな経営者に都合よく解釈されてしまう(新卒の頃いた会社を思い出す・・・)ところだけど、 そこには妥当性が伴った魅力あるビジョンとそれを正しく伝える力が伴っているからこそ人を動かし得たんだよな。
そんでもってまた、作中だと偏執的な完璧主義者っぽく言われてるけど、単純に完璧主義かといえばそうではなくて、 作中での色々な誤魔化しだったりとかあるいはiPodにHDDの振動保護機構が無かったみたいに話にもあるように、 「こだわるところ」にはとことんこだわるけどそれ以外に関してはわりと妥協している。
とかくデザインや動きといった物の見栄えによる印象「だけ」をすごく大事にしていて、 それが人を動かすということを計算してやってたんだろうなという気がする。