そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『Drive』感想

 なんとなくブレードランナーからのライアン・ゴズリングつながりで観てみたのだが、これは大当たりだった。

ドライヴ

ドライヴ

 昼は自動車修理工とカースタント、夜は強盗の逃がし屋で口糊を凌ぐ寡黙な男。フロントガラス越しの硬質な夜景のように淡々とした生活。そんな車だけが全てだった彼が、同じアパートの母子と知り合い、交流する中でつかの間の安らぎを得る。だが、彼女の夫の出所をきっかけとして、ある事件に巻き込まれてゆく。

 全ての要素が街を包む大きな闇へとつながっていく脚本は見事だったし、官能的なBGMも実によく効いていた。

 元より夢も野心もなく、ただ人に使われるだけの毎日。命を擦り減らす仕事をしても生の実感も得られない日々。そこに一瞬の夢として疑似家族のような交流があったのだ。それこそが彼の「全て」であり、それを与えてくれた者たちの危機に、正義感とも恋愛感情とも違う、いわば義の心が彼を駆動させたのだ。

 本作を一言で示すなら「浪花節」だろう。それを演じるライアン・ゴズリングの哀愁漂う表情が実に良い。少ない台詞ながら表情と仕草が語りかけてくる。


 Amazonなんかだと本作を『タクシードライバー』と重ねるような感想も見かける。たしかに寡黙なドライバーが大立ち回りを演じるという筋は同じなんだけど、物語性は全く違うと思うんだよね。

 あちらは世の中への漠然とした不満も自らの存在意義も暴力でしか示せない不器用な男で、その向け先でテロリストとも英雄ともされてしまう空虚さ。主人公の行為は結果としての「正義」でしかなく、その違和感が物語の後も蝕み続ける。

 それに対して、本作の主人公は生の空虚さを元より受け入れていて、それでいて残された人間的な部分が発露したものだと思う。

『ドライヴ』Blu-ray【日本語吹替収録版】

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 何はともあれ、作業のBGV程度のつもりで再生していたのがガッツリ引き込まれてしまう作品だった。