かの有名な『シグルイ』は『駿河城御前試合』のうちの一話を脚色した作品であるが、今回読んだ『腕』は全体を描いた劇画作品である。(もっとも、こちらも脚色やオリジナルの話が加わってはいる)
劇画というとっつきにくさや変態じみた登場人物たちから半ばネタ的に語られている印象もあるし、実際自分も「藤木vs伊良子以外にはどんな対決があったんだろう」程度の好奇心から読みはじめたのだが、思いのほか刺さる話数もあって普通に楽しめてしまった。
「無明逆流れ」を描いた第一話に関しては、シグルイでは藤木は狂気じみた執念によって伊良子に復讐を果たさんとしているように描かれているが、本作では三重への想いがモチベのいささか俗物じみた描かれ方をしている。だが、「全てを奪った相手への復讐が成就した結果、本当は手に入れたかった三重を失いました」という話の結末からするとこちらの方がキャラ解釈としては自然なのかもしれない。
個人的に気に入った話数でいうと江戸の太平の世においての隠密の悲哀を描いた第五話「忍び風車」と、己の覆しがたい性(さが)と人としての情との間の葛藤を描いた第六話「被虐の受太刀」が好きですな。
