そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選』感想

誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選 (ハヤカワ文庫 JA ノ 4-101)

誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選 (ハヤカワ文庫 JA ノ 4-101)

 春から放映のアニメ『正解するカド』に連動した、国内外の“ファーストコンタクト”ものを集めた短編集。アニメの方はというと、先に『シン・ゴジラ』が念頭にあって観てしまうと政府やらキャラクターやらの造形がチャチく見えてしまってどうにも入り込めず途中で止まってしまっているんだけど・・・それはそれとして“ファーストコンタクト”は好きなテーマの一つだったりする。

正解するカド Blu-ray Disc BOX 1(完全生産限定版)

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 外国語を学んでいると、ある単語が日本語のそれからは全く想像もつかない別のニュアンスを含んでいたりして、なぜそうなったのか文化的な背景や歴史的経緯を考察するのが面白い。それが異種知性体ともなれば肉体の形質すら異なるわけで、コミュニケーションの方法からして空想の翼を羽ばたかせる余地がある。

 「面白さ」には多分に「驚き」の要素が含まれるわけで、そういった点においてこの種のテーマには高いポテンシャルがあると思うのだ。


 本作ではまさに「コミュニケーションの方法からして」なギャグ作品の筒井康隆の「関節話法」から始まり、漫画的ラブコメな「コズミックロマンスカルテット with E」と「恒星間メテオロイド」、異質な存在との対話から我々人間について考えさせられる「消えた」や「わが愛しき娘たちよ」、人類を超越した存在への恐怖を感じさせられる「ウーブ身重く横たわる」に「タンディの物語」「はるかな響き Ein leiser Ton」など、一口に“ファーストコンタクト”といっても様々な方向性の作品が収録されている。

 特に気に入っていったのが円城塔の「イグノラムス・イグノラビムス」と野崎まどの「第五の地平」。

円城塔「イグノラムス・イグノラビムス」

 ある日気がつくと「わたし」の意思は得体の知れない生物の中にあった。彼らとのコミュニケーションを行う中で、自身の時間認識や自己の概念は揺らぎ・・・

 人が普遍的に持っているであろう感覚の根本を揺るがす感じなんかは、ちょうど『あなたの人生の物語』っぽさがあった。正直なところをいうと円城塔作品は苦手なものも少なくないのだが、この作品は難解さも控えめでテーマも好みだったこともあって楽しめた。

blue1st.hateblo.jp

野崎まど「第五の地平」

 チンギスハーン率いるモンゴル帝国は宇宙へと進出し、その版図を木星より先へと伸ばそうとしていた。この一文だけでもこの物語のぶっ飛び加減は伝わると思うのだが、その先の草原的宇宙観のドライブ感は更に予想を上回っていく。悪ノリと理屈で積み上げられた空想宇宙科学に丸め込まれる感覚が実に心地よい。

 以前に読んだ『know』とも通じるところだが、論理立ったバックエンドとラノベ的な軽妙さとが両立しているのがこの作者の面白さな気がする。

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 野崎まど氏はアニメ『正解するカド』のシリーズ構成も担当してるわけで、先に述べた「チャチさ」ももう少し間をおけば、気にせずに素直に楽しめるのかもしれない。



 そんなこんなで、収録作品にも幅があってなかなか読み応えのある短編集だった。「SF好き」を自称していてもどうしてもリソースの限界はあるので、能動的に手を出そうと思うと自分の中で評価が定まった特定の作者の作品に偏りがちになってしまうのだけど、こういう企画であれば色々な人の作品に触れることができるのが良いですな。

誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選 (ハヤカワ文庫 JA ノ 4-101)

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