『Boy's Surface』
恥ずかしげもなく正直なところを言えば、僕はこの作品の面白さを完全には理解できてはいない気がする。
僕が特に好きな小説のジャンルの一つに「言語SF」というのがある。
人の思考というものは凡そ言葉に基づいてなされる。
故にそこに仮想を挿入するということは、大袈裟にいえば人の認識そのものへの挑戦であるとも言えると思う。
だが本作は、それを更に先へと推し進め「物語という概念」そのものに挑戦したような作品なのではないかと思えた。
再読を要する。
『ニューロマンサー』
お馴染み『マトリックス』や『攻殻機動隊』の元ネタであり、サイバーパンクというジャンルを世に知らしめた作品。
SF好きを気取る以上はおさえておこうということで読んでみた。
本作といえば最初の舞台が未来の日本ということでも有名なのだが、これが思った以上に『ニンジャスレイヤー』の世界観でなんだか面白い。ニンジャも出てくるしね。
文章はやたらと"用語"が出てくるし言い回しも独特でお世辞にも読みやすいとはいえないが、「なるほどこれがあれの元ネタか」という発見を楽しみに読み進めることができた。
アジアンな小汚い未来都市像や人権をかなぐり捨てたサイバネ技術、そして人格をネットへの没入するというアイディアみたいな外面部分なんかは分かりやすいところだが、人間・元人間・人工知能と様々な「知性」がネットを闊歩する中で「人格」の境界がどこかを探るというテーマ性がこの頃から確立されていたことには驚かされた。
『PSYCHO-PASS ASYLUM 1』
PSYCHO-PASSシリーズは何度か言及したように僕の中ではそんなに評価が高くないのではあるが、近いテーマ性を上手く消化していて面白かった『パンツァークラウン』の著者による作品ということで読んでみた。
前後篇立てで前篇がシリーズの黒幕たる槙島聖護の片腕であるチェ・グソンの生い立ち、後篇が1期最終回に執行官の身でシビュラシステムの真実に辿り着き殺された朧秀星の物語。
僕がこのシリーズが好きになれないのはひとえにシビュラシステムと色相判定まわりの設定のガバガバさに起因してたりするんだけど、本作はそのあたりには切り込まずにあくまでガジェットとして扱うに留めているのが個人的には好感触。
文章自体も正直読みにくかった前作に比べると良い意味でマイルドになり読みやすかった。
『波よ聞いてくれ 1』
エロにバイオレンスにギャグまでこなす、マイ・フェイバリット漫画家 沙村広明氏の最新作。
コメディ主体という意味でも強くて弱い姉御肌のキャラが主体という意味でも『おひっこし』に近い方向性。
酒場で愚痴った失恋話がふとしたキッカケで地方局のラジオで流され、あれよあれよでラジオパーソナリティーの道へ。
持ち前のテンポの良さとギャグセンスで一気に読まされる。
しかしこの人同時に何本シリーズ持つつもりなんだ・・・
『ベアゲルター 2』
またもや沙村広明氏。
こちらは打って変わって陰謀30%バイオレンス30%エロ30%ギャク10%なタランティーノ的活劇娯楽作品。
徐々に明かされる島をとりまく製薬会社とヤクザの秘密。
復讐に燃える義手の女にうなる仕込み銃ヌンチャク。
次巻がめっちゃ楽しみなんだけど、結構待たされるんだろうなぁ。
『春風のスネグラチカ』
三度沙村広明氏。
これはだいぶ前に読んだんだけど、書くタイミング無かったからね。
1933年、ロシア帝国が崩壊しソビエト連邦となった国を旅する車椅子の「姉」とそれに付き従う眼帯の「弟」。
没落貴族、雪深い村、秘術。
氏の手広さにはただただ驚くばかりだが、結局のところ「フェチズムを良くわかってるよね」ということに尽きるのかもしれない。