ここまで2つの既製品のレバーレスコントローラーを使ってきたが、いずれもPCB基板にキースイッチを載せてボタン型のキーキャップを被せたタイプのものであった。
これらはキースイッチの交換や改造によってボタンの押し感を変更できるので、僕もより良い操作感を求めて色々と試行錯誤したりもした。
反応速度の理論値的な考え方でいえばボタンは「軽く押せてプレトラベルも総ストロークも短けれ短いほど良い」ということにはなってしまうのだけど、実際には押下距離に遊びが無さすぎると例えば波動拳コマンドの斜め入力なんかが入りづらくなってしまうし、押下圧が軽すぎても押していて気持ちよくない。
そんな中で「ちょうど良い塩梅」を知るためにも「普通のアケコンボタン」の感触を試してみたい気持ちが湧いてきたわけで、一度アケコンを自作してみようと思いたったのだった。
いざ自作
基板の選定
心臓部となる電子基板の部分については、調べた感じではRaspberryPi Picoを用いて作るかBrookの既製品を用いるかの2つが主流なようだ。
1つ目はRaspberryPi Picoにオープンソースで開発されているGP2040-CEというファームウェアを自分で導入する方法。Pico自体がめちゃくちゃ安価なのが魅力ではあるが、ボタンまでの配線なんかは自前で色々頑張らないといけない。
2つ目がBrookの既製品の基板を用いる方法。これは対応機種によってバリエーションがある。
こっちのメリットとしては、基板に気が利いた端子が実装されていてボタンをつなぐためのケーブル(このジャンルではハーネスと呼ぶらしい)が売られていることだ。(基本のハーネスの方だと方向キー部分がスティックと接続するための5ピン端子になっているため、レバーレスとして使う場合には変換用のハーネスも買うの忘れずに)
このあたりを買い揃えてきてそのままボタンと接続してやればそれだけでコントローラとして機能してくれる。
今回はコントローラ制作初体験なので、リスクやコストとのバランスを考えてこのBrookの一番安いZero-Pi基板+ハーネスを使ってみることにした。PS5での使用に関しては別にコンバータ持ってるしね。
ボタン類
ここは元々の目的でもあるので、実質のデファクトスタンダードである三和電子のボタンを千石電商で購入。
(色々と検索する中で見知った)数年前からの流行りどころであるGamerFingerなんかも置いてあるけど三和ボタンが一番コスパ良さそう。ボタン一個一個は数百円程度なんだけど、実際にレバーレスとして使おうとすると4方向+8キーで最低12個は必要だから、全体のコストでみるとボタンの値段って馬鹿にならないですな。
筐体について
実はアケコンを自作する上で一番の難関なのが筐体なんじゃないかと思う。レバーに比べるとレバーレスはそこまで剛性を気にしないで良いのではあるが、それでも思ったようなサイズのちょうど良い箱状のものを探してみると意外と見つからなかった。
今回一つ事前に考えていたのが、「不要になったB1-PCを分解してアクリル板を一部流用しよう!これでホールソー買ったり穴開けたりの作業がいらなくなる」という目論見だったのだが、それがむしろサイズ選択の足枷になってしまった。
変に加工に手間がかかるものを選んでしまうと工具代も手間もかかってわざわざ天板を流用する意義が薄くなってしまう・・・ということで悩む中で思いついたのが3Dプリンタの筐体なんかで使われるアルミプロファイルを使うというアイディア。
剛性は十分な上に重量はそこまでなく、30cmのちょうど良い長さにカットされた状態で安価で手に入る。
そして、規格化されていてTナットなどを活用することで自由な位置でネジ止めできる。
組み立ててみての所感
というわけで、天面・底面をB1-PCのアクリル板を流用・上下の辺をアルミプロファイル・基板固定パーツや左右の辺を3Dプリンタで作成する形で組み上げた。
バラバラに買い揃えたり試行錯誤したりなのでどんぶり勘定ではあるけど、最終的には基板やハーネス類やボタンなどの内部部品で1万円ぐらい、筐体のアルミプロファイルや各種ネジ金具類で5000円ぐらいで合計1.5万円といったところだろうか。
天板のアクリル板自体は3mm厚で単体ではたわむ感じはあるんだけど、アルミプロファイルの剛性のお陰で組み立てるとガッシリしてくれる。
重さは(ちゃんと量れるものが無かったので体重計の差分でざっくりだが)1kgちょいぐらいだろうか。
スタートボタン等があんまりバッチリなサイズではないので床に置いた拍子に外れて飛び出しやすいところはちょっと不満ではあるが、使っていて困るほどではないかな。
そして筐体は2040のアルミプロファイルを横にしてるので4cm高なんだけど、これがボタンにファストン端子を接続すると意外と余裕がなくて、少し端子を斜めに曲げないと収まらなかった。このへんちゃんと拘って自作するならL字のファストン端子でハーネスを自作するとか省スペース用のスイッチに交換するとかした方が良いだろう。
実際に使ってみての感想
そんなこんなでSnackboxと並列で使っていたのだが・・・これが予想外に気に入ってしまってしばらくはこっちがメインになっていた。
筐体自体の所感
僕は膝置きスタイルで遊ぶ方なので、筐体サイズや重さのお陰で安定感があるのがとても快適。
筐体の構造の都合上USBケーブルが左側から伸びる形になってしまっているのがちょっと邪魔くさくはあるが。
三和ボタンの所感
流石は定番品というべきか、とかく押していて気持ち良い塩梅だなあと感じた。変な引っ掛かりもないし、外枠からスルッと指を滑らせるとちょうど押せる感じが良い。
スペックを調べた感じ、総ストロークは2.5mm、プレトラベルはちゃんとした資料みたいなものは見つからないが0.8~0.9mmとか言われていて、押下圧は秤とにらめっこした感じ60g付近だろうか。
界隈じゃGamerFinger(というかCherryMx銀軸)が持て囃されているのでてっきりもっとストロークとかプレトラベルとかの数値が悪いものかと錯覚していたんだけど、実は素の銀軸を使うよりは反応性の面ではよっぽど良さそうに見える。
一方でこれまで使ってきたコントローラから比べ押下圧が重いので、遊んでいて指が疲れやすい感じはあった。(試合数こなしてくると下下コマンドとかスカる率上がるんだよね)
個々人で感覚に差はあるとこだけど、個人的には総ストロークやプレトラベルは三和ボタンと同じかちょい短いぐらい、押下圧はもっと軽くするあたりが押してての気持ちよさと操作性との兼ね合いでの理想なんじゃないかと思った。
まとめ
というわけで、今回のレバーレスコントローラの自作を通じて得た知識をざっくりまとめると
- PS5対応しようと思うと+6000円ぐらいはしてしまう
- 「レバーレスアケコン高すぎ!」とは良く言われるけど内部部品を買い揃えるだけで最低でも1万円ちょいで更にPS5対応付けて・・・となると、あんまり数が出ないジャンルの製品で3~5万円とかするのは実は順当な値付けなのかもなと思った
- 標準的なボタンを使う前提だと筐体の高さは4cmだとキツい、余裕を考えるともう1~2cmあった方が良い
- 三和ボタンって実はスペック的には全然優秀、強いていうと押下圧重めで疲れやすいのが難
- そこから考えるとプレトラベル1mm以下、総ストローク2mm前後、押下圧50g以下あたりを一つの目標値としてスイッチの改造をしていくと良さそう
という感じ。
「ひとまず作ってみよう」というモチベで作った割には使い勝手を気に入っていて、タイトルでVer.1と書いていることから分かるように、この後このコントローラのボタンを増設したりボタンを変えたりしつつも今でもメインで使えていたりする。