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そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『伊藤計劃トリビュート2』感想

伊藤計劃トリビュート2 (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃トリビュート2 (ハヤカワ文庫JA)

前からこのトリビュートという企画にはちょっと微妙な気持ちがあって、 それでも前作はまだどこか「伊藤計劃っぽさ」を感じられるラインナップだったんだけど、 今回は本格的に映画にかこつけた寄せ集めな感じがして、 お行儀の悪い商売に正直ちょっと嫌悪感がある。

blue1st.hateblo.jp

またこれは個人的な事情になるが、 一作品はS-Fマガジンで既読もう一つは短編作品としてKindleで購入して読んでいた作品であり、 最後の長編は面白かったけどSFっ気が出ないまま尻切れな感じで終わりだったわけで、 はっきり言って満足度は低めだった。


最後にして最初のアイドル

以前にKindleで購読済みな作品。

前にも書いたようにどこを切り取ってもネタバレになってしまうので感想を語りづらいんだけど、 とにかく発想のドライブ感が半端ない。

blue1st.hateblo.jp

いやぶっちゃけこの作品を先に読んでなければかなり満足感は違った気もするんだ実際。


guilty

楽曲とリンクした作品とのこと。

Noah's Ark

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  • アーティスト: ぼくのりりっくのぼうよみ
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2017/01/25
  • メディア: CD
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楽曲は聴いてみるとなかなかに格好良い感じでだが、 小説の方はというと・・・目の肥えたSFファンからするとちょっと厳しいかなという気がしてしまう。

描きたいところは分かるには分かるんだけど、 歌詞の抽象度ならともかく小説としてはディテールが甘いというかなんというか。


雲南省スー族におけるVR技術の使用例

残念ながらS-Fマガジンの方で既読だった作品。

SFマガジン 2016年 12 月号 [雑誌]

SFマガジン 2016年 12 月号 [雑誌]

ルポ形式で生涯をVR世界で暮らす架空の少数民族を描く。

よく冗談で「現実はゲーム内のMP(マネーポイント)を稼ぐためのミッション」みたいなことを言ったりするのが、 実際にそうなった時の価値観の逆転の想像力は面白かった。


くすんだ言語

Googleの機械学習を用いて翻訳の精度向上において、 あらゆる言語の意図を抽象化した「中間言語」が話題に登ったのが記憶に新しいが、 本作はまさにそんなテーマを描いた作品。

人は拙い言葉で意思を伝えあい、時にその齟齬で傷つけ合う。 だが、過剰に意思が通じてしまう状態が生じるとすれば・・・

題材や書き方なんかは非常に好み(現役のプログラマらしく通りで波長が合いそう)な一方で、 物語としてはもう一捻り欲しかったかなと思う。

同作家の『ヒュレーの海』もちょっと気になる。

ヒュレーの海 (ハヤカワ文庫JA)

ヒュレーの海 (ハヤカワ文庫JA)


あるいは呼吸する言語

機械の体を持つ妹との荒廃した世界での奇妙な生活。

丁度前のトリビュートに収録の「仮想の在処」とは対称的な設定となっており興味深・・・くはあったのだが、 恥ずかしながら正直あまりピンと来なかった。

伊藤計劃トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 藤井太洋,伏見完,柴田勝家,吉上 亮,仁木稔,王城夕紀,伴名練,長谷敏司
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/09/30
  • メディア: Kindle版
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ゲームの王国

カンボジア内戦前夜を舞台とした群像劇。

知恵が回り他人を動かそうとする狡猾な者や迷信深いの子供など、 とかく章ごとに焦点を当てられた人物ごとの知能レベルの表現の本当に巧みで驚かされる。

特に、自身の体験からしか物事を考えられない、 思考の範疇を超えると暴力に訴える田舎オヤジのうんざり感溢れる描写が凄い。

そうして様々な人物の視点を経るうちに、 いつのまにか悲惨な内戦の歴史を追体験させられるテンポの良さには兎に角惹きつけられた。

難点を上げるとすれば収録箇所はこれから物語の本題に入っていこうかというところで尻切れな感じで終わってしまい、 その時点まではSF要素も無いこと。

(この先でちゃんとSF要素が出て来るらしいけど)

これは全編版が出たらぜひとも読みたいところ。

同作者の『ユートロニカのこちら側』にも俄然興味が湧いてきた。

ユートロニカのこちら側 (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

ユートロニカのこちら側 (ハヤカワSFシリーズJコレクション)



そんなわけで個別には気に入った作品はあるし、 前回同様に「知らなかった作家を知る機会」としては良かったんだけど、 やっぱり「伊藤計劃」という看板を掲げてしまうことにはどこか拒否感が生じてしまうところ。

普通に若手作家の作品集にするとか、なんであれば賞にするとかすれば納得感もあったのになぁ。

伊藤計劃トリビュート2 (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃トリビュート2 (ハヤカワ文庫JA)