
- 作者: 神山健治
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/02/25
- メディア: 文庫
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神山監督の作品ということで『攻殻機動隊S.A.C』『東のエデン』な感じを期待すると、 全年齢対象っぽい作風で肩透かし感あるかも。
いつも通り時事的な社会問題をテーマに据えつつテックな描写はあるけど、かなりマイルドな味付け。
で、そういう部分を割り引いて観たとして・・・個人的にはあまりグッと来る部分は無かったかなーというのが正直なところ。
本作は主人公ココネの夢の世界と東京オリンピックを間近に控えた現実とが交差する形で物語が展開していく。
夢の中の魔法を恐れる国は「工業立国」と驕りながらIT化に乗り遅れた我が国を思わせる。
コミカルな表現をしているものの、迫りくる脅威に対してマンパワー根性論で対処しようとする(そして敢えなく敗れる)ロボット操縦の描写なんかはなかなか皮肉が効いている。
ただ、全体としては話の組み立て方にあまり納得感がないというかなんというか。
本題に入るまでが長くて、そのくせ嫌に説明的でかったるく、前半はウトウトしてしまった。
中盤の「父の語った物語の真実」や「魔法の真相」あたりの仕掛けは良かったけれど、 その分逆にそれ以降のファンタジックな演出に「何なんでしょうね、これ」と感じられてしまった。
終盤の物語的に肝心な部分が「夢の世界」でボカされてしまって、 大騒ぎした割にやたらあっさり解決した感じに見えてしまう。
Twitterネタも映像表現としては面白かったけど、物語的には活かされてたとは言い難い。
幼馴染ももうちょっと話に絡めてやらないと何のために出てきたんだか。
全体としては、現実的なテーマの割にはリアリティの薄い話をファンタジーでぼやかした感じに見えてしまった。
ついでに言えば、大冒険の割に解決される問題のスケールは随分小さい。
一応ハッピーエンドな体にはなってるけど、企業としてはそれで良いのか?みたいなことを社会人としては考えてしまう。
そんな感じで、個人的にはあまり満足度の高くない一本だった。