- 作者: ディック・レイア,ジェラード・オニール,古賀弥生
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2015/12/25
- メディア: 文庫
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本作はギャングと上院議員とFBI捜査官との癒着という実際にあった事件を基に描いた作品。
宣伝からは「所属する組織も立場も違う男3人が、強い絆で結ばれて一つの野望の実現のために協力する」という、 昔モーニングで連載していた『キマイラ』という漫画みたいなものを連想していた。
- 作者: 戸田幸宏,八坂考訓
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/01/28
- メディア: Kindle版
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だが、本作はどちらかというと「ギャングに良いように使われた小物たち」という感じだった。
本作ではまだ存命の人物も多く、「事実」と判明している部分しか描けなかったせいか、 創作性の入り込む余地が少なかったのだろう。
率直にいえば物語としての強度に欠けるような印象を受けた。
物語の主線としておくべきは
- ギャングであるジェームズがFBIに敵対組織の情報を流す
- FBIであるジョンが情報提供者としてギャングを保護下におく
- 上院議員であるビリーが両者をとりもち、兄との関係性を問題視させないようにする
の三方だと思うのだが、 描写を見るに1についてはジェームズの情報提供は渋々といった感じで、 FBI捜査官であるジョンが2を行う動機付けとしては弱い印象をもってしまった。
そこはジェームズのカリスマ性だとかアイリッシュの絆だとかいったところなのかもしれないが、 納得感あるほどには描かれてはいなかった、と思う。
そして3の部分は匂わせる程度であり、結果として三者協力というよりも、 ジェームズに良いように他二者が使われていたようにしか映らなかった。
しつこい位に描かれるジョニー・デップ演じるジェームズの家族への深い愛と他者へ向ける残酷さの描写はまあ良い。
過剰なまでの身内意識というのはギャングものとしてはありがちだが、外せない要素だろう。
そして、異常に用心深く、掟を破れば身内すら切り捨てるという彼の冷血さこそが、 彼を非凡な悪党としているのだという部分は確かに面白くはある。
だが本作で問題なのは、それら個々の事象と物語の全景とが全くつながらないことだ。
物語の背景としてFBIの保護があったことにより好き勝手できたという部分はあるのだろうけれど、 ギャングとしてのし上がるというジェームズの物語として最重要の部分が描かれず、 無軌道に殺人を犯していただけのようにしか見えないのだ。
当人には全く悪印象はないんだけど、 どうにも「この人が出てると駄作率が高い」と思えちゃう俳優さんというのが何人かいて、 僕にとってはジョニー・デップがその一人になりつつある。