そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『JOKER』感想

19年に観た映画の中でも外せないのが『JOKER』。実は去年観た段階で感想を書こうとして上手くまとまらなかったんだけど、年も変わったということでリトライしてみる。

ジョーカー ブルーレイ&DVDセット (初回仕様/2枚組/ポストカード付) [Blu-ray]

ジョーカー ブルーレイ&DVDセット (初回仕様/2枚組/ポストカード付) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • 発売日: 2020/01/29
  • メディア: Blu-ray

福祉や格差がテーマになってて正直「あざといな」とも感じたものの、それでも考えさせられるものは一杯あったし何より映像表現が素晴らしかった。

近年のDC作品はMCUの成功を意識してか無理に陽キャっぽい作風にして空回りしてる印象を持っていたので、こういうじっくり考えさせられるドシリアスな作りに回帰したのは個人的にはすごく嬉しいですな。


「曖昧さ」

個人的にはこの作品の肝は「曖昧さ」なのだと思う。

障碍を持ち老いた母を介護するアーサーの境遇やその身にふりかかる不幸を誰でも哀れだとは思うだろう。だが、だからといって彼の凶行に至るまでを全面的に肯定もできないだろう。

宣伝なんかで「心優しい男はなぜ悪のカリスマに変貌したのか?」なんて書かれたりしてるけど個人的には不適当だと思っていて、元々精神失調によりヤバい兆候はあって、それが様々な偶然によって最悪の形で発露したという物語だと思っている。

問題はどこまでがアーサーの責任か、その匙加減が見る者によって割と異なるんじゃなかろうかということ。


トーマス・ウェインや世間のアーサーに対する冷淡な態度はひどい仕打ちにも見えるが、一方で不気味な大男へのごく自然な反応ともいえる。 もしアーサーが麗しい美女や儚げな美少年だったらならば、あるいはもっと分かりやすい障碍だったならば世の中は同情的だっただろう。

彼の障碍からすればコメディアンになることは無謀な夢なように見える。もっと他人との対面ではない職業を選び努力していれば真っ当に生きられたのではという考え方もある。 (そも障碍が無くたって誰だって必ずしも好きな生き方を選べるわけではない) だが、「身の程を知れ、夢を諦めろ」というのは残酷だし、およそ多くの人が忘れがちだが「努力できる」環境やそれで「報われる」という認識が持てること自体が幸運なのだ。


うちの会社の社長が本作を「どこが面白いのか分からなかった」と言っていて我が意を得たりだったんだけど、恵まれている者には他人の困難さが見えない、それ故にどこからが社会の問題でどこまでが彼の責任か観る人によって見え方が変わるのが本作の面白い所なんじゃないかと僕は思う。

個人的にはグレート・ギャツビーの冒頭の一節を思い出すところである。

「ひとを批判したいような気持が起きた場合にはだな」と、父は言うのである。 「この世の中の人がみんなおまえと同じように恵まれているわけではないということを、ちょっと思いだしてみるのだ」

グレート・ギャツビー

グレート・ギャツビー


社会とは何か

この物語の直接のトリガーは予算削減により福祉サービスの打ち切りだろう。

社会というものをシステムとして捉えてしまうと「いかに無駄を省くか」という発想になってしまう。効率を求める中で社会に貢献できない弱者は切り捨てられていく。

だが、社会にはバッファとしての役割もあると思うのだ。叡智により個々人の困難をカバーし、種としての多様性を維持することで人類はここまで発展してきたのだ。 弱肉強食の動物の世界観を脱したからこそ今日の繁栄があるのだ。


バットマンとの写し鏡

人生の理不尽へのせめてもの復讐のつもりだったアーサーのテレビ出演は、図らずも彼を社会への不満を持つ者たちのアイコン・ジョーカーとして祭り上げてしまった。

興味深いのは民衆にとっての「法で裁けぬ悪を裁く者」という敵であるはずのバットマンと同様の立ち位置となっていることだ。 そして自己認識としては別にそれを志向していないのもバットマン同様である。

ヒーローとヴィラン・金持ちと貧乏と真逆の立場でありながら、合わせ鏡のような存在になっているところに面白さを感じずにはいられない。


ダークナイト・ライジングを再鑑賞

ダークナイト・トリロジーを見直していたんだけど、本作を踏まえてみるとリアルタイムではあまりピンと来なかったライジングの見え方もちょっと変わってくるなと思った。

ダークナイト ライジング (字幕版)

ダークナイト ライジング (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

バットマンは偏執的なまでの犯罪者絶対に許さないマンだったんだけどキャットウーマンという「状況から犯罪を犯さざるをえなかった人」との出会いによって変わっていったところだったり、山場であるゴッサムの閉鎖あたりも当時は警官隊vs脱獄囚の構図で見てたからいまいち面白くなかったんだけど、格差による不平を持つ民衆の分裂という文脈で読めるなと気づいたり。

そんな民意vs民意という状況の中で最後に善意が勝利する流れに今更ながらにグッと来てしまった。



そんなわけでやっぱり今ひとつまとまらないけど、是非見てみるべき、非常にオススメできる一本だと思います。

ジョーカーって作品によってキャラクター性が全然違うんだけど、本作によってそれらを「模倣者」として設定できるところもメタ的に面白いですな。

ジョーカー(字幕版)

ジョーカー(字幕版)

  • メディア: Prime Video


3月にはジョーカーの相棒役のハーレイクインの映画が上映されるわけだけど・・・こっちは予告観る限り『スーサイド・スクワッド』の流れを組んだパリピノリの作品に仕上がってそうで個人的にはあんまり食指がそそられないなあ。

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