今回はジョニー・デップ主演で本日公開のSF映画『トランセンデンス』。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2014/12/02
- メディア: Blu-ray
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本作の「人格の情報化」ってネタは
- 身体性を離れたときに人格はどのように変化するか
- 自己の同一性が物理的に保証されなくなったとき、いかにして自我を保つか
あたりのテーマは『攻殻機動隊』からこっち僕の中でツボだったりする。
そんなわけで、好みのジャンルってことで喜び勇んで観に行ってみたんだけど、、、
残念ながら色々と粗が目立って僕には楽しめなかった。
以下、どうしてもネタバレが含まれるので、未見で望まぬ方はブラウザ閉じてください。
それと、この映画が好きな人やジョニー・デップが出てるだけで満足!みたいな人は精神衛生のために読まないことをお勧めします。
どんなお話?
大雑把に説明すると、
世界的な天才情報科学者のジョニー・デップは、反インターネットを掲げるテロ組織に襲われる。
死に瀕した夫を前に、同じく科学者の妻は兼ねてより研究していた「人格をスパコンにアップロードする」技術を用いることを決意。夫の人格をコンピュータ上で人工知能として蘇らせる。
しかし、人をはるかに超えた演算能力を持ち、ネットワークを介してあらゆる情報へのアクセスと自身の複製能力を得たことにより、"夫"の行動は変容をはじめる。
寂れた街に建造された巨大施設の中で彼は進化していく。妻の望んだのとはまた違った形で。
という感じのお話。
自分で書いててなんだけど、導入部だけだったら割と面白そうな気がしてくる不思議。
残念ポイント
情報管理社会の恐怖を描くんじゃねーのー?
職業柄というやつなんだろうけど、ITネタに関してはどうしても厳しい目で見てしまうところがある。
本作も御多分にもれず結構「おいおい」と思える部分があった。
しかし何より気に入らなかったのは唐突に話に登場する"万能ナノマシン"の存在。
人体を再生する究極の医療にもなり太陽電池にもなり(=物性まで変化してる!)、あらゆる端末をハッキングできるけれどサイズは微生物大。
そしてなんと侵入した人間を遠隔操作できる!
こいつの存在によってITパニック物だったはずがヌルいゾンビものみたいな展開になってしまった。
あまりにナノマシンが万能すぎて「人工知能怖えー」じゃなくて「あのナノマシンすげー」て感じ。
恐怖の対象を安易に「物質に転化」してしまっては、ITものの良さである「形ない敵の恐怖」が味消しになってしまうと思うんだよね。
今ひとつ刺激の乏しいストーリー・映像
もちろんITものを真面目にその枠だけで描くと映像として地味になってしまう事情は分かる。
故に色々と理屈つけてアクション展開に持ち込むのはよくあるのだけど、本作に関してはそのあたりも弱い。
本作で「CGがんばってんなー」と思うのは件のナノマシンによる施設や肉体の再生とか蒸散してく場面とかなんだけど、そこは別に目新しい感じでもない。
だいたい国家的な危機だというのに画面上で動くのはテロ組織と米軍が合わせても両手で数えられる程度の人数だけ。
「これ低予算映画ですか?」と言いたくなる出来。(たぶんメインキャスト揃えるのに予算使いすぎたんだろうね)
そして抑揚に欠ける話が展開され、最後はお決まりの「科学を捨てて自然に帰る」ラスト。
「え、テロ組織はお咎め無しですか?」とか「どう考えてもそんな気楽な事態じゃないですよね」とか。
こんな浅い話で「行き過ぎた科学に警鐘を鳴らす」なんて言われりゃ鼻白みますわ。
総評
精一杯解釈して、本作のエッセンスとしては
- 情報管理社会の恐怖
- 人格の同一性の証明
- 神に等しい力と愛との葛藤
みたいなとこだろう。
でも考証の甘さや諸々のヌルさでちょっと僕には楽しめなかった。
でも、僕があくびしてる横で女性客がボロボロ泣いていたりしたので、ジョニー・デップがラブ台詞を言ってればそれで満足みたいな層なら楽しめるんじゃなかろうか。
まとめ
- 「来るべき人工知能の恐怖」というよりは「あのナノマシンは流石に無理じゃね」
- 人類レベルの危機に対して対応ヌル過ぎ
- 「愛ゆえに」で済ませるには無茶し過ぎ、知能あるくせに不器用過ぎ
- 作者: ジャック・パグレン,入間眞
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2014/06/19
- メディア: 文庫
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なんか悪評書く時の方が筆が進むあたり、僕は性格が醜いな。