- 作者: 長谷敏司
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/10/11
- メディア: 単行本
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人の知性を超える人工知能の誕生――シンギュラリティが訪れたとき、我々の社会はどのように変化していくだろうか。本作は汎用人工知能が実現し、人型ロボットhIEが人々の生活をサポートする22世紀を舞台としたジュブナイル小説だ。
物語を支える道具立ての巧みさ
本作の著者は、このブログでもいくつか作品を読んではその度に絶賛している長谷敏司氏。人工知能学会倫理委員会所属というのは伊達ではなく、人工知能まわりのリアリティや道具立ての巧みさには毎度ながら感心させられる。
本作においてもその感性は遺憾なく発揮されており、例えばいかに22世紀といえどAIの処理機器自体は巨大なのでhIEはリモートで制御されているという設定だったり、そういった人知を超えた存在をおっかなびっくりしつつも利用したり拒絶したりする人類の姿勢だったり、あるいは作中のAIのどこか人とは違った思考様式だったりと、とかくそういうディテールの巧さを感じさせられる場面が多かった。
特にAIが人を動かすためにその感情を利用する「アナログハック」の概念は秀逸だと思った。実際にMicrosoftの女子高生ボットAIやPSVRのサマーレッスンなんかの事例にも表れているように、ことに「萌え」の感情はモノを受け入れる側の心理的なハードルを著しく下げる。
アナログハックやAIの不気味さの表現の秀逸さなんかは『エクスマキナ』にも通じるものを感じるが、その上で単に「AI怖いね」に留まらずに技術のリスクとリターンの関係性からの希望ある未来を描く力量には感服させられた。
ラノベ的な部分には難儀した
そんなわけでテーマとしてはかなり好みなはずの作品だったのだが・・・一方でラノベというフォーマット故かどうにも読み進めるのに時間がかかってしまった。
一つは主人公の「無垢な少年」具合へのノれなさというのがあって、これはちょっと前に放映されていたアニメ『うしおととら』でも感じたことだけど、なまじ中途半端に感情移入できる少年という属性で、そこに全く歪みがない「良い子」だとオッサンとしてはどうにもむず痒くなってしまうのだ。
もう一つがキャラクター描写の冗長さで、特に前半なんかはレイシアが可愛いのもアラトがチョロいのもわかったから、ちゃっちゃと話を進めてくれと何度も感じてしまった。普段小説を読み慣れない層への配慮だろうか、キャラによっては特徴的な口調の台詞回しだったりするのだけど、それも個人的には違和感として感じられてしまった。
BEATLESS "Tool for the Outsourcers"
- アーティスト: kz(livetune),ニルギリス,Seiho,banvox,fazerock,y0c1e,Pa’s Lam System,Sakiko Osawa,redjuice
- 出版社/メーカー: グッドスマイルカンパニー(GOOD SMILE COMPANY)
- 発売日: 2014/06/26
- メディア: おもちゃ&ホビー
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こういうフォーマット自体にどうしても拒絶感が出てしまうあたりは、加齢というものを呪うしかあるまい。
そんなこんなで面白いなという気持ち半分、辛いなという気持ち半分で読み進めてきたが、おそらく311に触発されたであろうテーマ性や物語の納め方は読んで良かったと思わせられた。
ビートレス イントロダクション 少女型hIE レイシア 1/8 完成品フィギュア(Introduction BEATLESS set)
- 出版社/メーカー: グッドスマイルカンパニー
- メディア: おもちゃ&ホビー
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この筆者といえば伊藤計画トリビュートに一部が収録されていた「怠惰の大罪」の出版をずっと待っているのだけど続報が無いんだよな・・・