近場で先行公開があったので早速観てきた。
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「日本の作品が原作でハリウッドで映画化された」と聞くとあまり当たりが無いイメージがあったし、だいたい原作の主人公「キリヤ・ケイジ」は青年であることが割と重要なのに50代にもなったトム・クルーズが演じるということで、正直いうと不安というのが本音だった。
『All You Need Is Kill』読んだよー - そんな今日この頃でして、、、
しかし、その不安は杞憂だった。
大筋では原作を踏襲しつつも必要に応じて細かな設定はいじり、原作で脇の甘い部分を固めている。
そして終盤の展開は大きく変わっているものの、それが決して作品の魅力を損ねてはいない。
原作との「面白さ」の違い
僕なりには原作の面白さは
- 未熟な青年がループによる「死に覚え」によりどんどん強くなっていくゲーム的な表現
- 同じ時間を繰り返すにより、周囲のキャラクターに多面性が見えてくる
- 強さを手に入れた反面で失われていく人間性
という要素だと思っている。
だた、映画にするには尺の問題や映像映えの問題もあるわけで、そのまま持って行けはしない。
およそ大抵の場合、それを無理に「原作通り」にしたり、反対に無茶な改変をされたりして台無しになったりするのだが、そのあたりの処理が本作は上手かった。
1. 演じ分けのグラデーション
さしあたって不安だったのが、トム・クルーズが演じることにより1の要素が損なわれてしまうことだったのだが、そこは心配ご無用だった。
トム・クルーズが初年兵ってのは無理があるだろーって思ったら、ヘタレなメディア士官があるキッカケで戦場へ駆り出されることになることによって「初年兵」であることの無理をなくしている。
そしてトム・クルーズの演技も流石なもので、最初のヘタレなメディア対応部署の士官から最後の勇敢な戦士としての姿まで、違和感なく演じ分けられていた。
また、エンドレスエイトの例を出すまでもなく、文章と違って映像では「同じ情景」が何度も繰り返されるのは観客には苦痛だったりするのだが、そのあたりの「ループしてる感」を出しつつ省略する表現が巧みだった。
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これ実際には何パターン録ったのか気になるところ。
2. 周辺のキャラクターの描写
原作と違い同じ部隊の仲間にもある「見せ場」が用意されているが、一方逆にいえばそれだけのキャラ達である。
このあたりは尺の問題もあるし致し方ない。
原作の嫌味な奴だったり気むずかしい上官だったりが、周回を進めることで多面的な魅力を見せるようになる展開は個人的にはツボだったりするので、このへん未読の方は是非読んでみていただきたいところ。
『四畳半神話大系』とも近い物語性といえる。
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3. 収束/分岐する未来
原作の結末はハッピーエンドともバッドエンドとも言えない代物だったが、僕なりには凄く悲しい終わり方だったと思う。
人として生きることを諦め、ギタイを倒す兵器として生きる続ける。
それはいわば、ただひとつの答えに収束する勝利のパターンをトレースするだけの機械になるということ。
一方で映画では、一度掴んだ残酷な勝利よりも、人としての生き方を選びとる。
(僕なりのラストの解釈は「オメガ倒してタイムリープの力を再度手にする→世間ではギタイの活動が停止し、人類が勝利→ケイジはその勝利を手放してでも、部隊やリタが生存している過去へ→自由に動ける立場になり、より犠牲の少ない勝利のパターンの模索」だと思っている)
分岐していく未来の未知のパターンを選択する。
まさにファレウ曹長の運命観の話なのだ。
最後のシーン、原作ファンとしては見事に裏をかかれた。
総評
本作では大きな所ではリタの「ループ」設定もギタイの「ボス」の設定も変わっていたりする。
しかしそれらも作品の味を損なうことなく、むしろこの結末の変更を無理なく行うために使われている。
あと、何より好感が持てるのが、ハリウッドアレンジでありがちな場違いなラブ描写が薄かったことだろうか。
本作はハリウッド的バタ臭さも薄く、一方で「原作通り」ではない工夫が見られ、心底観てよかったと思える作品だった。
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