いわばSF考古学ミステリーとでもいうべき小説。
- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン,池央耿
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1980/05/23
- メディア: 文庫
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月で発見された古代の遺体。
明らかに人類の歴史を外れた年代のものでありながら、 一方でその人体はあまりにも人類に酷似していた。
チャーリーと名付けられたその遺体のルーツを探るため、 世界中のあらゆる分野の科学者たちが集められる。
主人公であるハント博士もその中の一人。
持ち前の柔軟な発想と温和な人柄により、 いつしかチームの中心的な役割を任せられるようになっていた。
徐々に情報が集まりチャーリーが地球外の存在であることが判明してくる中で、 今度は木星の衛星ガニメデから巨大な宇宙船と明らかに人類のものとは異なる骨格が発見される。
それら異星文明の行方は、そして地球人類との関係は・・・
ハードSF
本作は現実的な科学知識に論理的な推論を積み上げて描き上げられた、 いわゆるハードSFといわれるジャンルの作品である。
ロボが出なければビームが飛び交いもしない。
だが、話が進むに連れて集まりゆく情報と、そこからの推論が派生し時に対立する仮説に、 科学的に好奇心を刺激させられた。
リーダーシップ、オーナーシップ、チームマネジメント
個人的な話になるが、仕事の方がタスクを適当にこなせば良いだけの立場ではなくなってきたこともあり、 「チーム」の物語を読む際にはいかにうまく集団をマネジメントしていくかみたいな視点から見るようにもなってきた。
そういった視点で本作を見ると指導者的な立場のキャラクターとしては、 現場で一癖も二癖もある各分野のスペシャリストの調整役を果たすハント博士と、 一歩引いた視点から明確な思想をもってプロジェクトを導くコールドウィル本部長がいる。
特にハント博士について考えていると頭をよぎったのが、 ここのところのRebuild.fmで話題の「サーヴァント型リーダーが良いか、それとも支配的なリーダーが良いか」という話。
- 作者: ロバート・K・グリーンリーフ,ラリー・C・スピアーズ,金井壽宏,金井真弓
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2008/12/24
- メディア: 単行本
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Rebuild.fmの方では概ね「みんなの面倒事を引き受けてくれるリーダーは有り難いことは有り難いけど、ビジョンが見えないと部下としてはしんどくなる」という方向性まとめられており、僕もこれまでの(あまり豊かでもない)社会人経験からしても共感するところではあったりする。
だが、かといって会社組織においてそれほど立場の無いものがビジョンだなんだというのも難しいところがあり・・・
で、本作のハント博士はといえば、彼も「サーヴァント型リーダー」といえる。
だが、彼は決してチームの雑用係に成り下がるのではなく、 各分野のスペシャリストが出してくる成果を把握し、それらをつなぎあわせ、 チームが相乗効果を発揮するのを助けるように振舞っているのだ。
この辺りの姿勢については非常に参考になるものがあるなと思った。
新技術だ新ツールだと変化の激しい業界なわけで、 一個人がその全てを把握するのは難しい。
人間やはり興味があることに対する吸収が一番良いわけで、 各人にある程度裁量を与えて自由にチャレンジさせるのが効率良いように思う。
そこに勉強会などを共有の場を催し、 自らも学びチームにとっての有用性をみて還元していく。
そういうのが知的労働を行う組織としての理想形なのかもしれない。
などということを、どっちかというと勉強会には消極的なタイプだったのだけども思ったりした。
そんなわけで、本作はSFとしての面白さもさることながら、 ある種の組織論という意味でも読んでいて面白い作品だった。
(恥ずかしながら)あとがきで知ったことではあるが、本作はシリーズ作となっているということなので、 他も読んでいきたい。
- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2014/12/12
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- 作者: ジェイムズ・P.ホーガン,James P. Hogan,池央耿
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1997/08/29
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最後に。
本作を読んでいて、なんかこのワクワクに既視感あるなーと思ったら『プロメテウス』だった。
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あの作品は正直ガッカリ映画だと思っているけど、宣伝と前半だけは本当にワクワクしたんだよな。