- 作者: 冲方丁,弐瓶勉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/05/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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映画版はかなりアレンジの入った作り、前のアンソロジーはスピンオフ的な作品集であったのに対し、本作は原作の展開を忠実になぞったものとなっている。
少年との旅から始まり、生電社への潜入とシボとの奇妙な共闘、そして遙かに伸びる柱廊を登り世界を隔てる超構造体を穿つまでが描かれる。(原作でいうと新装版の1巻~2巻前半まで)
原作の雰囲気に合わせてか、著者である冲方氏のマルドゥックシリーズのイメージからするとかなり抑えめで淡々とした文体に最初は正直ちょっと乗りにくさも感じた。ただこれも話が進むごとに段々と調子が馴染んでくる。
小説という情報密度の高い媒体にしてこの進み具合から察することができるように、話の展開自体は原作に沿いながらも、そこにかなり著者による解釈が介在している。原作ではとかく黙して語らぬ霧亥の内面が描かれ、あまりにさり気なすぎて読み飛ばしてしまいそうな要素に意味が付加される。ああなるほどそういう風な見方もあるかという箇所もあれば、いやそれはちょっと違う気がするなという場所もあるが、少なくとも筋を知っている物語でありながらも飽きることは無かった。
個人的に特にグッと来たのがシボ女史への視点であり、己の身すら改造するサイバーパンクを体現したようなキャラクターでありながら、それでいてその本質に最も人間らしさを宿しているという描写にはハッとさせられた。このあたりのキャラクター性の肉厚さにはなるほどマルドゥックシリーズと通ずるものを感じる。
サブタイトルからしてなんとも対になるものが出来そうな感じだが、果たしてこれはシリーズ化してくのだろうか。個人的には東亜重工あたりなんかは他人の解釈ではどのように写るのか、是非とも読んでみたいところだが。
- 作者: 冲方丁,弐瓶勉
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