そんな今日この頃でして、、、

コード書いたり映画みたり。努力は苦手だから「楽しいこと」を探していきたい。

『さよならの朝に約束の花をかざろう』感想

「岡田麿里が監督やってる」ぐらいしか情報を仕入れずに観に行ったんだけど、いやー、良かった。


まだ僅かに伝説が生きる世界。子供の姿のまま数百年を生きるイオルフの民は、人里離れた地で布を折り暮らしていた。

だがある日、その長寿の血脈を狙う帝国メザーテによって村は滅ぼされてしまう。

辛くも逃げ出した少女マキアは、その道中で野盗に襲われ親を亡くした赤子を見つける。似た境遇から捨て置けず、エリアルと名付けて母になると決意するマキア。

しかし、人の時間軸の中でイオルフの民が生きるのには、ましてや人の子を育てるのには多くの困難が立ちはだかるのだった。

さよならの朝に約束の花をかざろう 公式設定資料集

さよならの朝に約束の花をかざろう 公式設定資料集

普段だったらこういう親子愛みたいな大上段に構えた「良い話」にはあまり惹かれないというか、なんであれば避けるぐらいなんだけど、本作には非常にグッと来るものがあった。


P.A.worksらしい透明感ある美麗な背景に、吉田明彦のデザインのキャラクター!

いわゆる流行りどころの萌え絵とは少し違う、どこか淡くて儚いおとぎ話のような印象を喚起させられる。 FFTで育った年代としては、ファンタジーものの原風景なのだ。

それが映像として動き回るだけでもかなり満足度が高い。


毎度トゲを仕込んだ脚本が魅力な岡田麿里が本作では監督までやっているせいか、細々とした描写にこう心を抉られるものがあるんですな。 冒頭のマキアがレイリアに対して引け目を感じてる感じとか、母の死体の硬直した指を一本一本折ってエリアルを取る感じとか。

社会の中で異質な存在として暮らす苦しみやらエリアルの年齢ごとに揺れ動く微妙な心理やら、とかく毎場面で観ていて心を波立たせられる。そんな中で母たらんと努めるマキアの姿には応援したくなってしまう。


脇を飾るキャラクターにもそれぞれの「痛み」があり、描かれなかったその人生に思いを馳せらされる深みがある。 その後のメドメルはどうなったのか、王に忠実な軍人ながらどこか人間味あるイゾルの過去は・・・

登場時間は短くとも、脇役たちでそれぞれ一作品作れそうな位に生き生きしていて世界に広がりを感じられるのは見事だ。

さよならの朝に約束の花をかざろう 公式美術画集

さよならの朝に約束の花をかざろう 公式美術画集