先週金曜に観てきたのだけれども、いざ文章にしようとするとなかなかまとまらず、結局一週間経ってしまった。
おおざっぱなあらすじ
この物語は、スランプに陥っていたカナダ人小説家がカナダに住むインド人パイを訪ね、パイがその人生を振り返りながら語る形で進行する。
比較的裕福な家庭に生まれたこと、宗教との出会い、動物園の生活。
政治の変遷によるカナダへの移住と、そしてその途中で船が難破し、表題の虎との漂流生活。
この遭難の中で、パイは何を考え、どのように行動し、何を得たのか。
何を信じれば良いのか?〜決断主義の時代〜
『ゼロ年代の想像力』に示されたように、現代というのは「ベタに信じるのではなく、あえて信じる時代」だといえる。
この作品にもそういった空気感を感じとることができる。
- 作者: 宇野常寛
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無宗教の父は、宗教を信仰することを無意味だという。
科学者の母は、血族との絆としてあえてヒンドゥー教を信仰する。
そんな家庭環境の中で少年パイはキリスト教にもイスラム教にも興味をもち、3つの宗教を信仰することにする。
あらゆるものが見えるようになった現在では、どんなものにも粗が見えてしまう。
しかし、ありもしない正解を規定して全てを否定するのではなく、それぞれの良い物は良い物として汲み取る柔軟さは、決断主義により分断された世の中で上手く生きてゆく一つの指針を示してくれているように思う。
僕は学生時代に色々人生というものに悩んでいたとき、ニーチェの「真理を設定するのも弱さのうち」という発想に感銘を受けて、心理的には凄く救われたのだけれども、それを思い出した。
- 作者: 竹田青嗣
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価値観の対立と己の中の攻撃性
政治体制の変遷により国外へ移住せざるおえなくなったこと、国内では比較的裕福な暮らしをしていたのが一転し船での被差別的な扱い、そして遭難したボートに乗り合わせた動物たち。
作品の随所に価値観の対立が描写されている。
良いところを認め合おう、なんていうのは小学校の道徳ぐらい陳腐でつまらない話だが、実際問題として価値観が合わない場面というのは生じてしまう。
どうしても埋めようのない価値観の対立が生じた時、そこには攻撃性が産まれる。
シマウマ、オランウータン、ハイエナ、虎、そして人間のパイが乗り合わせた漂流ボートはまさにそのメタファーのように思えた。
ハイエナはシマウマとオランウータンを殺し、虎はそのハイエナを殺した。
そしてパイも身の危険に晒される。
しかし一方で、虎がいるという緊張感がパイの生命力にもつながっている。
作中でもしつこいぐらい虎が己の鏡であると示唆される。
己の中の攻撃性といかに向き合うか
パイの父がいうように、攻撃性を隔離してしまうは一種の一般的な大人像なように思う。
しかし、環境が変わり価値観の対立が生まれると、ふとしたきっかけで攻撃性が顔を出していまうことはある。
己の中の攻撃性を殺して生きていくことはできない。
なぜならそれこそが己を突き動かす力でもあるからだ。
必要なのは、己の中の攻撃性を自覚し、正しく距離をとりながら生きていくことなのだと思う。
- 作者: ヤン・マーテル,唐沢則幸
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・・・しかし僕は文章が拙いなぁ