昨年は完全に『ゼロ・グラビティ』に持っていかれた感があったけれど、今年も引き続き「宇宙映画」の衝撃にやられた!
こっちも映像美で魅せるタイプの作品と思いきや、細やかな科学考証・二転三転する展開・そしてSFファン的にグッと来る演出と全く隙が無い。
「荒廃した地球を、そしてそこで暮らす家族を救うため、父は遥か銀河へと旅立つ」というと海底から戦艦が飛び立ちそうな感じだが、そこから先の捻り方が過去の名作を踏まえた二一世紀の作品というもの。
単なる宇宙冒険譚でも「宇宙の神秘」ものでもない、ロジックとテーマ性とが綺麗に噛み合った「物語として美しい」映画となっていた。
宣伝なんかじゃ「家族愛」にフィックスした言説が多くて、そういういかにも「良いこと言ってますよ」な感じの作品が苦手な身としてはちょっと身構えてもいたのだが、そういう安易な部分以外でも十分に楽しめた。
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壮大すぎて「感想」という綺麗な形には纏まりそうもないので、以下グッと来たポイントを書き出す感じで。
若干ネタバレ含んでしまいます、注意。
荒廃した、でもディストピアというほどでもない地球
単純にジャンルとして好きだったりする手前、色々な作品の「荒廃した地球」が頭をよぎったりするんだが、本作のそれは地味に新鮮だった。
人々はまだそれなりに冷静さを保ち、貧しく苦しいながらも何とか生き続ける社会。穏やかに死を迎えようとする世界。
肩パッドつけたモヒカンなんぞいない、強権を誇る統治者もいない。管理するまでもなくリソースが無い。
世界が狭くなり、人々が助けあう(助け合わざるをえない)社会というのは、ある種の人々には心地よく映るのかもしれない。
しかし、かつての宇宙へ夢を馳せた時代を否定し、技術による明日の発展を捨てた社会というのはやはりディストピアなように思う。
技術がアイディアを産み、アイディアがビジネスとなり、ビジネスが社会を回して更に技術を向上させる。
エンジニア業ゆえかもしれないが、科学技術と社会とは切っても切れないものだと思う。
野良ドローン
序盤の野良ドローンに対して娘が生物のように感情移入する演出にはグッと来た。
あまり本筋とは関係ない部分かなーとも思ったが、今にして思えば社会と個とのスタンスに対するメタファーに思えてきた。
役に立たない野良ドローンを役立つ部品として分解して「社会のリソース」とするか、あくまで「個」の存在として感情移入するか。
父はドローンは分解しても、娘を学校(=社会)に従わせることは選ばなった。
誰を救うか、何を護るか
劇中、主人公たちは形を変えながらも度々「少数を犠牲にして多数を救うこと」の選択を迫られる。
個人的には『Fate/Zero』や『新世界より』を彷彿とした。
「種の保存」という部分に着目してロジカルに選ぶならば「多数」をとるべきなのは間違いないが、単純にそれを選ぶことができないのが生物というものである。
「種の保存」が本能ならば、「身内びいき」もまた本能なわけで。
何かを置き去りにしなければ前に進めない。
前に進まなければ生き残れない。
けれども・・・
他にも「相対的な時空」をちゃんと物語の部品として取り入れていたり、一見に地味なデザインに見えて面白い(けど合理的な)動きをするロボットにも妙にリアリティを感じたり、あと映像美に圧倒させられたり。
あとTARSには不覚にも泣かされた!! 途中の演出で「黒幕じゃね?」って疑ってごめんよー(T ^ T)
偶然にも『楽園追放』に続き人間臭い人工知能というモチーフだけど、この手のネタにはどうしようもなく心を揺さぶられる。
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そんなわけでちょっとまとまらないけど、個人的には手元に置いておきたいと思うレベルですごく好きな作品になった。