『第9地区』『エリジウム』でお馴染みニール・ブロムカンプ監督の最新作。
- アーティスト: ハンス・ジマー
- 出版社/メーカー: Rambling RECORDS
- 発売日: 2015/05/20
- メディア: CD
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特に『第9地区』は僕の好きな映画の中でもかなり上位に位置するわけで、この監督の作品はどんなに前評判が悪かろうとも地雷臭がしようともチェックしようと思ってる次第。
そんなわけで、さっそく観に行ってきた!
ツボを分かっている演出
元々SFガジェットに拘りのある監督であり、しかも今回はロボットが主役ということで、実にギーク的ロマンの溢れる作品だった。
開発者の合理性をかなぐり捨ててまでの拘りとか、平凡な量産機がふとしたキッカケで色違いのパーツ=個性を与えられる感じとか、あとアーマードコアじみたムースの発進シーンなんかは、もうその絵面だけでご飯3杯イケますって感じ。
そしてAIが開発者の想像力すらも超えていく感じは、エンジニア業の人間としては非常にグッと来るところだった。
考証は微妙
人工知能というものの捉え方の大雑把さだけでいえば、昨年の個人的ワースト映画『トランセンデンス』とも五十歩百歩かもしれない。
ロボットが人の形をしていても構造は異なるように、人工知能も人を模していたとしてもそれと同じ思考方法である必要はない。
本作の結末である「意思」まわりの話は、取り込み方から結末まで、今ひとつ乗り切れないものを感じられた。
(このあたりは「宇宙人だから」で全て乗り切れた『第9地区』と比べると不利な部分ではあるが。)
このへんのテーマだったらもっと「身体性」と絡ませて欲しかったなとも思った。
人とくらべて強靭すぎる肉体をもちながら、「人並み」でいられるだろうか?
数多のドラキュラもので描かれるような優越種としての意識が芽生えないものだろうか?
ラストももっといくらでも含みがある形でいけたものを、最も安直な所で落ち着いてしまったように思う。
別に「近場の一台」である必要はなかったし、なんであれば攻殻機動隊みたいな方にもいけた気がする。
あと、もっと人間側の生理的な拒否感があっても良かった。
今回はみんなコピーと死期とが重なった結果として偶然にも意識の一意性が保たれたけど、そうじゃない場合もありうる設定なんだから、そのへんに触れても面白かったのではないだろうか。
もっとも、この監督は「SF的テーマを描く」というよりは、「SF的小道具を用いてドラマを描く」方を志向しているようにも感じるわけで、そのあたりは致し方無いのかもしれない。
テーマ性もちょっと消化不良かも
テーマ性に関しても、残念ながら『第9地区』ほどの冴えは感じなかった。
「子は親の鏡」という言葉にもあるように、幼いAIをもって人間の歪さを映すあたりは悪くなかった。
だが、執拗に「黒い羊」の寓話として表現された差別のテーマ性に関しては、チャッピーへの暴力はロボである以前に「警察ロボ」であるところに起因してる部分が大きいわけで、エビ型エイリアンの生理的な嫌悪感と比べると上手いとは思えなかった。
(もしかしたら監督の中では生得的差別と社会的役割による差別では明確に異なったテーマ性をもっていて、『第9地区』とは別のことを示したかったのかもしれないが、残念ながら僕にはそこまで読み取れなかった。)
なんだか後半はケチをつけるような話が多くなってしまった。
だが、観てるときは本当にノリノリで楽しめたし、ラストには感動できた。
必ずしも完璧な作品とはいえないかもしれないが、それでもギーク的には愛せる一本だと思う。
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しかしここのとこ「意思あるロボット」ものは良作多いですな。
振り返ってみるとそんな映画ばっかり観てる気がする。
僕が好きな「意思あるロボット」ものアニメの筆頭であるところの翠星のガルガンティアの後編円盤も今月届くはずなので楽しみ。