好きなアニメをリストアップするならば、個人的には間違いなく上位に入る『翠星のガルガンティア』。
- 作者: 海法紀光(ニトロプラス),虚淵玄,(カバーイラスト)田代雅子,(挿絵)Production I.G,(キャラクターデザイン)鳴子ハナハル
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2013/11/30
- メディア: 文庫
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本作はその前日譚、主人公レドが人類銀河同盟で育ち、チェインバーに出会うまでを描いた外伝小説。
ラノベフォーマットであり読み進めやすかったが、内容的にはかなり本格的にSF・ディストピアしていた。
『翠星のガルガンティア』ファンにはもちろんのこと、ディストピア系SFが好きな層にもオススメできる一冊だと思う。
TVシリーズ本編ではヒディアーズとの戦争に特化したディストピアとして描かれていた人類銀河同盟の社会。
本作は、その社会構成を支える幼年学校が舞台となる。
現実と区別が付かないほどのVR技術と個人のあらゆる状態を監視する”シート”を用いた教育という名の洗脳と選別。
個人の適性を計り、時にコントロールしながら、それでも社会に適合できない者を排除していく。
レドの生い立ちを描きながらも、同時に人類銀河同盟の縮図が表現されている。
覆しようもない大きな力で、しかしそれと気づかせずにコントロールされていく恐怖の描き方が、平易で淡々した文章ながら実に良く出来ていた。
個人に合わせて提示する情報自体を変え、それと気づかせずにシステムに従わせるWebの時代の想像力。
そして、「大人や学校や社会は完全なものでそこから提示される「正解」こそが絶対であり、それと異なる答えは「間違い」である」という、現代では誰もが一度は経験した(そしてある程度の年齢で克服しなければならない)学校観。
そんな閉塞空間における小さな、残酷な競争社会。
脅威の迫る社会における学校ということで、僕は今年頭に観た『エンダーのゲーム』を彷彿とさせられた。
ここが残念だよ『エンダーのゲーム』 - そんな今日この頃でして、、、
あちらは表現不足で色々と不満を感じてしまったが、本作で魅力と感じた要素こそが映画『エンダーのゲーム』が表現し損なった部分なのかもしれない。
この小説の流れからTVシリーズの最後の答えに至ると思うと、凄く感慨深いものがある。