世間で大評判の『君の名は。』
- 作者: 新海誠
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
- 発売日: 2016/06/18
- メディア: 文庫
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いかにもティーン・エイジャー向けデートムービーなイメージでこんなくたびれたオッサンが観に行っても良いものか、 だいたい俳優起用やら楽曲やらがすげーしゃらくせえ臭いがするし断片的に目に入る情報であらすじ大体読めちゃってるし等々なにかと気後れしてたところはあったんだけど・・・
いやー、観に行って良かったですわ!(手のひら高速回転)
各所に新海誠「っぽさ」をちゃんと保ちならがも上手く一般ウケの路線に寄せて、それでいて全体的に高いレベルにまとまっている。
笑えて泣けて、些細なツッコミどころなんかどうでも良くなるぐらい面白かった!!
(そういえば新海さんの作品て「笑い」のイメージ無かったからそれも新鮮だった。)
テンポの良さ
まずもって感心したのが作品のテンポの良さ。
序盤は少しタルいかなとも思ったのだが、中盤以降はグングン引き込まれていった。
個人的に分析するに、それは「お決まり」な要素をかなり省いたからなんじゃないかと思う。
入れ替わりによる日常の中でのあれやこれやのトラブルとかそれこそ主人公たちが惹かれ合うためのエピソードとか。
普通に考えるとそのへんにもっとボリュームを割きそうなものだし、それはそれであれば面白そうな気もする。
だけど、本作はそこを楽曲に乗せて本当に意外なほどサクッと終わらせてしまう。
「そのへんはありがちだから、観た人が勝手に想像してください」と、そいういうことなのかもしれない。
(もしかしたらそういう「想像の余地」が、観客の誰もが人生で一度は考えたであろう「自分が女(男)だったら」的な感性を刺激するのかもしれない)
シチュエーションとしては美味しい、しかしありがちな展開をカットし、速やかに本題に入っていく感じが僕には心地よかった。
画の良さ、都市の情景
新海作品なんで言うまでもないことなのだけど、非常に画が綺麗だった。
もちろん糸守の風景や自然の描写も素晴らしかったのだが、それよりも東京の橋やビル群のような構造物の情景が美しくて心惹かれた。
で、その画の感想そのままに、都市の物語としての描き方も個人的には良かったと思う。
このようなプロットだと、凡百の作家なら「素朴で美しい田舎」と「薄汚れた都会」の安直な対比にしてしまったかもしれない。
だが、本作における「東京」はそうではない。
良い奴もいれば嫌な奴もいて、楽しいこともあればうんざりすることもある。それは田舎も都市も同じなのだ。
フラットに、人が息づく生活圏として描写されている。
なんとなくすれ違い通り過ぎる人たちにもそれぞれの物語があり、もしかしたら凄く遠いところで何かしら繋がっていて・・・
そういったことに、僕は妙に感動してしまった。
終わり方にびっくり
ああこの感じは、いつものか。いやそういう美学も分かるが、ちょっとぐらい救いがあったって良いじゃないか・・・
・・・からの予想を裏切る(でも世間的にはこっちが王道なのかな?)幕引きに驚いたやら、『秒速5センチメートル』との対比で感慨を覚えたやら。
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新海さんの作品て(といいつつ『言の葉の庭』とか最近のはチェックしてないんだけど)、 心に残ったかすかな痛みを抱えて生きてく、どこか失恋の美学とでもいうべきものを描く作家さんなイメージがあったんだけど、 ここに来てこういう方向に行くとは!
デートムービーと侮るなかれ。
画はいつもどおり綺麗だし、ミュージックビデオ的な感性は極まってるし、全体としてのテンポも悪くない。
キャラクターにも惹かれるものがあるし、物語のSFっ気オカルトっ気も良い塩梅。
そんなわけで、ほんとベタ褒めになっちゃったけど、『君の名は。』はオッサンにも普通にオススメです。
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- 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
- 発売日: 2016/06/18
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