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『ナルコス: メキシコ編』感想

 中南米の麻薬カルテルとDEAとの対決を描いた『ナルコス』に新たにメキシコ編が配信されたので観てみた。メキシコに舞台を移した今作では、片田舎の小物に過ぎなかったフェリクスが国中の組織を牛耳る強大な指導者になる様が描かれる。

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 一大ピカレスク物なパブロ・エスコバルに群像劇じみたカリ・カルテルときて、今度はビジネスマンめいたフェリクスとまた違った魅力を出してくるから恐れ入る。


 元警官のフェリクスは地方のしがない地場産業の従事者でしかなかったが、仲間のラファと共に「画期的な新製品」を作り上げ、壮大なビジョンを思い描く。だが、「上手い考え」だけですんなり事が運ぶほど世の中は簡単ではない。気まぐれな上司に暴走する部下、アクの強い利害関係者・・・内外様々な問題に悩まされながらも、持ち前の社交性を武器にクレバーに状況も味方につけてのし上がっていく。前半のこのあたりの描写は中間管理職の悲哀に満ちていて面白い。

 また、一度確固たる地位を築いたからといって安泰とはいえない。状況の変化を機敏に察知して状況に合わせて自らの業態も変えていかねば勝者であり続けることなどできない。コロンビアのコカインの登場に海路規制強化といった情勢により、彼らの組織は生産業者から輸送業者への転換期が訪れる。そう、お馴染みのカリ・カルテルの面々にパブロ・エスコバルの登場である。もちろん新しいことを始めるのに抵抗はつきものだ。この過程でフェリクスの理に合わなければ旧知の友をも切り捨てる冷淡な側面が現れる。


 前シリーズまでと比較するともう一方の主人公であるDEA捜査官サイドの絡みが弱い印象があるが、それもそのはず(恥ずかしながら途中まですっかり失念していたが、)彼こそがナルコスシリーズの序盤で語られる「例の捜査官」なのだ。彼の犠牲によって麻薬カルテルとの血みどろの戦いの火が付いたのだ。


 最初にも書いたように、フェリクスの印象は「ビジネスマン」である。前シリーズまでの登場人物たちと比べると元から確固たる地盤があったわけでもないが、根回しと利益分配でのし上がっていく様は、悪人ながらも凄いなと思わせられるものがある。

 しかし、前シリーズのコロンビアなんかだと曲がりなりにも公権力がカルテルと対峙していたのに対し、今回のメキシコだと国家の中枢のあらゆる部分にまで金のつながりが影響を及ぼしているのが絶望的だ。

 メキシコ編もSeason2の制作が決定しているようで、おそらくここから分割統治への移行や現在へ続く血で血を洗うカルテル間の対立などが描かれていくのだろう。楽しみである。


 同じくメキシコ麻薬戦争といえば本作では脇役のエル・チャポを主役とした作品も配信されてるけど、こっちは演出がくどくてあんまり好きじゃないんだよな・・・

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