前2作が「うーん・・・」て感じの出来だったので半ば惰性で観に行ったんだけど、 結果的に言えばなかなか楽しめたし、そう悪くはなかったんじゃないかと思う。
もちろん前作までと同様に尺を持て余してるなーとか原作未読だと伝わらなそうだなーとか感じた部分もあるのだけれど、 モノローグがあったりコミカルな場面をコミカルに描写したりと前2作でちょっと厳しいなと思った部分が改善されていて見やすくなった気がする。 (それは挑戦をやめてこれまでの物語シリーズに寄せたということなのかもしれないけど)
何より良かったと思うのが、 「絵の力」が効果的に作用していたこと。 (これまではちょっとアバンギャルドな方向に振りすぎて空回っているように思えていた)
キスショットとの官能的な雰囲気すらある交流にはその裏側の好意が感じられたし、 だからこそ、その直後の凄惨で破滅的な対決には心を揺さぶられるものがあった。
「傷つきたくも傷つけられたくもないから他人と係わらない」スタンスだった阿良々木暦が、 傷つけ・傷つきながらも皆が係わり合い生き残る、曖昧で不確かで優しい選択肢を選び取る。
僕は以前に『憑物語』でシリーズを「けりをつけない」「予定調和を否定する」といった物語性に抗う物語だと感じたのだけれど、 思えば本作なんかはその最たるものかもしれない。
アニメーションの圧倒的な表現力も手伝って、僕が『傷物語』という物語が好きであることを再認識させられた。
- 作者: 西尾維新
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/12/23
- メディア: 単行本
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でもやっぱり劇場3部作にできる分量じゃなかったと思うんだよね・・・長めの1本か前後編か、もしくはOVAみたいな形でもっと話の密度を上げるべきだったと思う。